「第63回日本伝統工芸展」 日本橋三越にてはじまりました。(~10月3日まで)

 

伝統工芸の保存と後継者の育成を目的として日本工芸会が毎年開催。染織、陶芸、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の国内最大規模の公募展です。重要無形文化財保持者の作品をはじめ、一流の目で選定された素晴らしい入選作約600点あまりをガラス越しでなく肉眼で間近にみることができます。

 

染織部門が本館と新館の両方にわかれて展示されているので要注意!
出品作品一覧の案内図をもらってみたほうがわかりやすいです。

 

初日の今日は授賞式があり、今年から日本工芸会総裁に就任された秋篠宮眞子内親王殿下がいらっしゃっていました。

 

左から、「木版摺更紗」重要無形文化財保持者 鈴田滋人先生、「紋紗」重要無形文化財保持者 土屋順紀先生、文部科学大臣賞を受賞された海老ヶ瀬順子先生とカメラ

文部科学大臣賞 ◇ 穀織着物「海に聞く」海老ヶ瀬順子

穀織(こめおり)は紗の技法から生まれたもの。2本1組の経糸を対として絡み合わせ、透し文様を織りだしています。穀織の名称は籠目(こめ)からとも、米粒を並べたように見えるからともいわれています。

練糸と生絹の糸をつかい絣織も併用された技の結集ですが、臭木と藍で染められた柔らかさと、織りの技による動きが、軽やかな躍動感をだしています。

 

木版摺更紗着物「舞花」 鈴田滋人

木版摺更紗は木版摺りと型紙捺染を併用する独特の染色方法で染められる和更紗のひとつ。江戸時代の鍋島更紗を起源としています。

 

紋紗着物「晃」 土屋順紀

植物染めを生かして独自の絣を融合させた紋紗。

平織と捩り織が交互に入った紋紗という複雑な織りを、グラデーションが美しい絣で織りあげています。

 

琉球紅型作家の城間栄順先生とカメラ

琉球紅型染着物「彩海」 城間栄順

紅型らしい紅型で沖縄の海が表現されています。躍動感ある波と可愛らしい魚と蟹

 

小倉織の築城則子先生とカメラ

極細の木綿糸で織られる小倉織。経糸は2200〜2400本、緯糸はほとんどみえません。極細の経糸でつくられる縞の美しさです。

 

久留米絣着物「光韻」松枝哲哉先生

久留米絣の伝統的な技法とともに透明な空気感がある現代的な藍絣です

 

絣着物「御杣山(みそやま)」 小林敬子先生

伊勢神宮の式年遷宮のための檜林を括りと摺り込みの絣で表現。真綿から紡がれた糸が味わいをだしています。

 

花絽織着物「花競べ」 磯緋佐子先生

花織と捩り織を組み合わせた織りは首里の花倉織でみられますが、首里以外の他地域で織られる場合は花絽織と称されます。浮き織りと絽が透明感があり上品。

 

きものは価格や用途にあわせた様々なものがあるべきだと思います。だからこそ伝統を継承し向上していくためには、きものエンドユーザーも含めて今の至高を知るということが必要なのです。

上質な素材をつかい高度な技を用いて、さらに作家の個性があり、力がある染織。顧客のみの展示会などではみることができますが、ずらっと一堂に並んでいて誰でも好きなだけ自由にみることができるのはここだけかと思います。

 

「きものカンタービレ♪」は、撮影と掲載の許可を日本工芸会と各先生方よりいただいております。

 

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