きものは1枚の布を8つ(身頃×2、衽×2、袖×2、衿、共衿)の部分になるように直線に裁断して仕立てられています。なので洋服のように形ができているものを着るのではなく、個々の身体にあわせて着付けをして完成するものです。日本人にとってきものが日常着ではなくなってしまった最大の理由は<着付け>という手間がかかるということにあります。
しかし、洋服のような立体的な形がつくられていないことによって、きものを解くと再び1枚の布に戻すことができるという利点があるのです。きものを解き1枚の布に戻してから水洗いして伸子(竹に針がついた棒)や板をつかって糊づけして、幅を揃える、これを「洗い張り」といいます。きものが日常着であった昭和30年代までは一般家庭で主婦の仕事としてごく普通に行なわれていました。きものはある程度着用したら(着る頻度によりますが、毎シーズンだったり、1年〜3年)、洗い張りをし、再び仕立て直しをするということが当たり前の衣裳なのです。
一枚の布に戻すということは、染め直すこともサイズを変えることもできます。そして他のものへとつくりかえることもできます。きものから羽織、帯、小物、布団などにも流用されていきました。

アンティークの黒留袖をつくりかえた帯です。

うまく繋ぎあわせると1枚のきものから2本の帯をつくることができます。帯としてデザインされたものではないことが結果として面白いものができたりすることもあります♪

更紗文様のトートバッグは、岡重の1反の反物から帯とバッグにしています。


現代の生活において、洗濯機で簡単に洗うことができない(できるものもあります)、着付けという動作の手間がかかる、というのは面倒で贅沢なものかもしれません。しかし、きものは1枚の布に戻して再生ができる。使い捨てではないという感覚が生みだした、日本の美なのです。

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