「ブータン 〜しあわせに生きるヒント〜」展 が上野の森美術館にて開催中(〜7月18日まで)


2011年の秋、第5代ブータン国王がご成婚されたばかりの美しい王妃とともに来日されたことは記憶に新しいかと思います。そのときに身につけていらした両陛下の民族衣裳の美しさにも眼を奪われました目

ブータンは1989年より国民に公的な場での日常着での民族衣裳の着用が義務づけられています。1974年に鎖国をといた際に「ブータンは近代化はするけれど西洋化はしない」と、第4代国王が明言されたことから、今でも国の伝統文化である織物を重んじ守る政策を行なっています。自国の民族衣裳を着ることが<普通であり当然である>ということになっているのです。

日本人がきもの生活をしていて、目立ってしまう…日本人のひとりとしては、とても羨ましい。。。

ブータンはヒマラヤ山脈の麓にある小さな国で大きさは九州ぐらい、人口は約75万人。


ブータンの民族衣裳の中でも珍しい貫頭衣「シンカ」と「キシュン」
木綿、野蚕、イラクサの繊維がつかわれています。 ブータンでは19世紀まではイラクサの布が織られていましたが衰退し消滅してしまいます。しかし現在はイラクサ織りの再興の動きがあるのだそうです。


女性の衣裳「キラ」。「キ」は巻き付ける、「ラ」は〜するもの、という意味。
形状はインドのサリーに似ています。複数枚の布をつなぎあわせた約1.5m×2.5mの大きな布を巻き付けて「コマ」というブローチでとめます。

着方の映像も流れていて面白い。


技法は、片面縫取織、両面縫取織、経浮織など。素材は木綿とウールが主で、特徴的なものには、野蚕、イラクサ、ヤク。ヤクは戊辰戦争の官軍の毛付き陣笠にもつかわれたあの毛。白熊(はぐま)といわれる高山にすむ牛です。

文様部分は「ブラ」といわれる野蚕糸。ブータンでは殺生を嫌うので羽化した後の繭から紬糸をとります。


絹地のキラの高級品。白地に片面縫取織で精緻な文様を織りだした「キシュタラ」


女性用の装束の「テュゴ」 長袖のショートジャケットのようなもの


女性の衣裳の正装では「ラチュ」といわれる平緒のような布を左肩からかけます。寺院や役所に入るときや儀式や式典では必ず身につけるものなのだそう。


男性の衣裳「ゴ」。日本のきものと同じ衿合せのヘチマ衿がついた袷仕様の筒袖。きものと同じく、おはしよりをつくってたくし上げて帯でとめます。日本の丹前や褞袍にも形状が似ていることから、ゴと呉服であるきものは同じルーツだという説もあるようですが、ゴの起源は中央アジアチベットです。

ゴは下に着ている白地のシャツごと袖口をカフスのように折り返して着るのが特徴


ヤクの毛で織られた、レインコート「ヤタ•カルチャプ」


ブータンの手織りの織機の紹介映像。
腰機は日本の天秤腰機や傾斜型地機にとてもよく似ています。

カードを回転させて織るカード織で帯が織られます。


この展覧会は、祭り、生活様式、信仰、そして王室について紹介されています。
その土地が育んだ衣裳が、伝統文化としてだけでなく、生活の中で生かされている。それはどうして可能なのか。まさに「しあわせに生きるヒント」かと。


つづきます(^-^)/

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