めゆ工房 コブナグサと黄八丈 / 2015年初秋 八丈島の旅 その10 のつづき

日本全国の染織の産地巡りをするわけは、その土地の空気と陽射しを感じたいから…。
染織品にはそれが色濃く現れていると、少なくても私はそう思って各産地の染織を楽しんでおります。
見逃せないのは、その土地に行かなければわからない、自然からの賜物♪

黄八丈の黒染め(主に黒八丈)の糸の泥染めでつかわれる、めゆ工房の泥沼です。


八丈島は三原山といわれる東山と八丈富士といわれる西山が火山活動でくっついたひょうたんの形をした火山島。面積は山手線の内側とほぼ同じ。東山と西山で は植物の生態系が違い、東山の樹木の8割は黒を染める椎の木、西山の樹木の8割は樺色を染めるタブの木(マダミ)が自生しています。

しつこいようですが、ここは東京都なのです


●黒染めの染色の工程●
黒染めの糸には椎の木の樹皮がつかわれます。

2~3年ほど寝かせて乾燥させた椎の木の樹皮を煮て染液をつくります。

椎の木の樹皮は生皮や湿ったものは灰色になってしまい黒く染まらないのだそうです。

樹皮を3時間ほど煎じてつくられた染液を煎汁(フシ)といいます。コブナグサ、マダミも同じ。

樽に煎汁(フシ)を入れ糸を一晩浸けます。そして煎汁づけ(フシヅケ)→それを取り出して天日干しし乾燥。これを15回くり返します。

この糸を泥沼にもっていき、泥媒染をします。沼つけ(ヌマツケ)といいます。
もっとドロドロした沼だと思っていたのですが、水が澄んでいてキレイ。

ザリガニもいました! そういえば、奄美大島の泥沼にはイモリがいた。鉄媒染の泥沼は自然が豊か。

この泥沼から泥を掬って笊でコシてゴミを取り除き滑らかな泥だけをバケツに移してそこに糸を入れて染めていくのだそう。※詳細は美しいキモノ2015年夏号の染織レッドリストの頁を参照

黒染めの糸は沼つけの後、糸を軽く絞って2時間ほど寝かせて、清流で水洗いして干します。
さらに煎汁づけそして沼つけの泥媒染、というように染めと媒染を繰り返すのだそう。2回目の煎汁づけは5~6回、ただし沼つけは糸が弱ってしまうので2回までにとどめます。現在、八丈島で泥沼をもっているのは、めゆ工房のみ。八丈島の他の黒染めは鉄媒染をしているのだそう。奄美大島、久米島でも泥染めはあります。

高温多湿なところも、南国っぽいです。


泥染による鉄媒染でなる墨色

めゆ工房の黒八丈


●樺染めの染色の工程●
主に蔦八丈でつかわれる樺染めの糸は、マダミといわれるタブの木の樹皮で染められます。
内側が赤ければ赤いほど良い色になるそうです。

マダミは生皮でないと染液がでないために、樹皮を剥いだらすぐに籠に入れて2~3時間煎じます。
※詳細は美しいキモノ2015年夏号の染織レッドリストの頁を参照
最初の煎汁づけは桶に寝かせずに振り染め。緩く絞って竿の上に並べて一晩寝かして翌朝に絞って干しあげます。これが樺染独自のフシアキといわれる工程ですひらめき電球

黄染めと同じように樽に煎汁(フシ)を入れ糸を浸ける煎汁づけ(フシヅケ)→それを取り出して乾燥をくり返しますが、酸化しやすく空気に触れると斑になるため、上を布で覆い蓋を被せて一晩おきます。
媒染には木灰をつかいます。木灰は釜の灰をつかっているのだそう。

熟した山桃のような色になるのが理想とされます。

蔦八丈の樺色


実はきもの文化検定の工房見学会の翌日もめゆ工房に伺っています。居残り…(・_・;)?
こちらについては記事を改めます。山下誉先生とカメラ


黄八丈関連は、きもの文化検定を受験される方は要チェック!
八丈島の歴史と風土、黄八丈、黒八丈、蔦八丈の黄染、黒染、樺染の染料と媒染、各工程での違いなど。黄八丈は独自の技と文化を継承しているので、試験問題がつくりやすいのです。

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