先日もチラッとご紹介しましたが、今、大阪くらしの今昔館にて
「風に舞う布 琉球染織の美」展が開催中です( ~ 6月28日まで)

天井のうちくいは、芭蕉布に筒描きの技法で故城間栄喜が染めたもの。
「うちくい」とは、沖縄の八重山諸島でつかわれる伝統的な大きな布のこと。
風呂敷のようなものですが、風呂敷の語源である風呂にいくためのものを包む布ではなく、つくり手の想いが込められた布です。祭礼や結婚式などでもつかわれます。

公益財団法人の日本伝承染織振興会のコレクションから琉球染織が展示されています。
日本伝承染織振興会は、宝暦元年(1751年)創業の繊維商社である名古屋のタキヒヨーが日本の呉服業からアパレル業に変わっても日本の伝統的染織の技術の伝承と保存のために、資料の収集と保存、そして展示を行なっている事業なのだそうです。


琉球染織は本来は琉装という帯をつかわず、きものの意匠が帯とのコーディネートで分断されることのない装束でした。故に紅型の意匠にしても絣にしてもとっても大胆。そして青い海と空の元で生まれたことからか、鮮やかな色が生きています。

その技と意匠を生かし今も魅力的な作品が伝承されていますが、その源流となったもの、そして今の作品を堪能できた貴重な展示会です。

●紅型●
城間栄喜の屏風仕立ての祝幕。こちらも芭蕉布に筒描き。

城間栄喜の中振袖「州浜に枝垂桜と菊模様」
城間紅型らしい色と意匠の作品。
今では少ないですが、型紙を紗張りで左右対称につくり背中心から柄が対象になっています。

紅型染めの工程も紹介されていました。


●ミンサー●
ミンサーといえば八重山ミンサーしか思いつかなかったのですが、首里をはじめ他地域でも織られています。ミンサーとは綿糸で織られる細い帯のこと。

今も腰機で織られるミンサーがあることを知り驚きました! ミンサーはメンサーともいわれます。
左◇伊波メンサー。うるま市で腰機で織られています。竹串をつかい経糸を浮かせた紋織物。
中の2作品◇読谷ミンサー。読谷山花織のミンサーです。
右の2作品◇波照間メンサー。神事でつかわれるヤモリとヤイヤマアオイの意匠。


●首里織●
首里の織物は士族の女性の嗜みとして母から娘へと伝えられたもので、貢納布と違って口伝の技術であったため染織方法を記したものもなく織りに関する役人同士のやりとりなども残されていません。織り継がれ語り継がれて伝承してきたものです。
首里花織、花倉織、道屯織(ドウトン)、諸取切(ムルドゥッチリ)、手縞、煮綛芭蕉布、花織手巾の7種類の技法。その中でも代表的な花織と絽織を交互に織る花倉織と経糸を浮かせて織る道屯織は王家と貴族の織物であり首里でしか織られませんでした。

宮平初子による道屯織。道屯織は主に男性の装束であったとキャプションにありました。

祝嶺恭子の琉服。大胆な絣模様が意外!私は絣は大きなもののほうが好みなのでじっくり鑑賞しました♪


●読谷山花織●
絣と紋織りものを併用した手の込んだ贅沢な織物のため、琉球王府御用達とされ王族と貴族のものとされ、
読谷の住民以外の一般の人々は着用できなかったといわれています。
琉球統合やその後第二次世界大戦の影響で技術が途絶えてしまいますが、昭和30年代与那嶺貞の尽力によって復興されました。与那嶺貞は1999年に重要無形文化財の各個認定(人間国宝)をうけています。


●芭蕉布●
芭蕉布の中でも布を織る前に糸を綛の状態で灰汁で精練し染めた煮綛芭蕉布がたくさん展示されていました。煮綛芭蕉布の存在は一昨年の喜如嘉の芭蕉布展で知ったのですが、以来見るようになったような…。

芭蕉布の糸づくりの解説。この撮影がされた時、実は私もおりました。今回この展示会にご案内いただいたのもこの時の芭蕉布ツアーで日本伝承染織振興会の方とお一緒したのがご縁。このツアーでのご縁は本当に大きく、私の染織そしてきものに対する姿勢をグーンと変えるものでした。

芭蕉布の糸や布に触ってみることができるようになっています。これ是非に触って感じてください!

芭蕉布はかつては喜如嘉以外でもつくられていました。
今帰仁と宮古の芭蕉でつくられた芭蕉布。
きものは、西筋ヒデのもの。ぬぬパナではお馴染みの作家さんです。この方は還暦を迎えられてから織物の道に入られたそうで、現在は94歳。今も多良間島でつくられています。


●与那国島の織物●
与那国の染織といったら小さな格子の花織の絹織物の印象が強いですが、かつては木綿と苧麻をつかった交織のものが織られていたのだそうです。(八重山交布と通じるものがありますね)
ドゥダティといわれる作業着、(ドゥは4枚、ダティは仕立てという意味なのだそう)、シダティといわれる祭服など島の生活に根付いたものから生まれ伝承されてきました。

今は絹は群馬のもの、苧麻と染料は島で栽培されたものがつかわれつくられているのだそう。技の伝承からこのような現代的でモダンな作品が生み出されています。
左◇村木ユリ子 / 右◇玉城悦子


●南風原の絣●
現在の琉球絣は90%以上を南風原にて生産しています。今は素材は絹が90%ですが、もとは木綿が主流。


●宮古上布●
1mに成長した苧麻を年に4~5回収穫して、ミミ貝でしごいて繊維を取っています。経緯糸手績みの苧麻糸です。琉球藍で染められ砧打ちと糊で打ちだされる光沢が特徴ですが、糊は洗うと落ちます。


●久米島紬●
養蚕、糸、絣括り、染め、織り、砧打ちまですべて久米島。養蚕は一時中断されていたそうですが、近年再開されました。。そして染料も島内で採取されるものをつかっています。そして絣括り、染め、織りは分業制でなく一貫作業で行なわれています。


●八重山上布●
現在は経糸は苧麻の紡績糸(ラミー)、緯糸が手績みの苧麻糸のものが多いようです。八重山上布の定義はあくまでも、苧麻糸。木綿や芭蕉がつかわれたものは八重山交布です。
捺染絣が主流ですが、今は絣括りのものもあります。仕上げは海晒し。


※作家の先生方の敬称は略させていただいております。
琉球芸能や島唄コンサート、紅型の筒描きのワークショップも開催されます。
琉球染織の源流と今を知ることができる貴重な展示会ですので、ぜひお見逃しなく!

※撮影ときものカンタービレ♪への掲載は許可をいただいたものです。
ご案内いただきました、日本伝承染織振興会の毛呂祐子さま、ありがとうございましたm(_ _ )m

常設されている大阪くらしの今昔館も面白かったです♪

江戸と大阪の風習の違いが細かく解説されたパネル展示が興味深い~。

再現された町。長板に洗い張りした反物が張られているのもリアル~♪

展示場内は朝から夜そして夜明けとなっていく演出。

きもので街が歩けるようにレンタルきものと着付けのサービスがあり、これが外国人の方に大人気!
国際色豊かな会場となっておりました。


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