パールトーン (シミ抜き、紋入れ、仕上げ、検品)/ きもの文化検定工房見学 その1 のつづき

パールトーン社の見学でスゴイ!と感心したこと。
皆さん作業中でも手を止めてきちんと丁寧に見学者に挨拶してくださいます。
まるでホスピタリティが行き届いたホテルのようでした。

肝心のパールトーンを加工するところは企業秘密とのことで、見学が全くできず残念。
加工するところはとても危険で、社員でも限られた人しか入れないのだそうです。

見学の後はレクチャールームへ。

しかし「時間がないので質疑応答はできません」というマスコミ対応の芸能事務所
のような応対にガーン(T▽T;)

パールトーンは表面に膜をはる防水加工とは違って絹の繊維の1本1本に撥水力を持たせる加工。
袱紗に水を入れて振ると…

このように水が繊維の隙間から飛び出します。
パールトーン加工は膜のようにするのではなく、繊維の1本1本にされている、そして
繊維の隙間には水を通すだけの通気性があるということです。


レクチャールームに用意してくださったのは、各自にシボのある縮緬地とお茶とテッシュ。
同じ生地にパールトーン加工されているところとされていないところがある縮緬の生地です。

手触りでパールトーンがされているところとされていないところの違いがわかりました。
ということは風合いも違うということです。※あくまでも個人の感想です。
同じ生地でBefore-Afterの手触りが比べられたのが、この工房見学で良かったこと。

パールトーン加工がされているところは、お茶をかけると水分がパールのようになりますが、
されていないところはあっという間に水分を吸引し縮んでしまいました。
水分による絹の収縮防止にはとても有効だということがよくわかります。


私が知りたかったのは、パールトーンで風合いが変わるのか変わらないのか。
変わるなら変わらないようにする対策なり企業努力がされているのかどうかということ。
例えば絹の中でも、古代種の繭なのかハイブリット種の繭なのか、生繭なのか乾繭なのか、
織りでも、結城紬と大島紬とか一越縮緬と鬼シボ縮緬とか…、そういった素材ならではのものが
生み出すの風合いの違いを、パールトーン加工しながらも残す対策をしているのか?
生地によってパールトーンの成分を変えるとかしているのか?
食い下がって質問してみました。←しつこい芸能レポーターみたいになっちゃった汗

結論から言えば、素材の違いでの対応はされていないとのこと。
パールトーン加工を施しても風合いはかわらないということであれば、然もありなん…。
あくまでも布に対してパールトーン加工がきちんとされたかどうか、
検品でひっかかったらさらに加えるという方法を用いられているとのことのお返事。
今後努力しますとのお答えでした。

さて、パールトーンとはそもそも何なのでしょう(・_・;)?
京都大学エネルギー理工学研究所による産業支援の研究レポートによると
石油溶剤にフッ素系撥水剤とシリコン系撥水剤を配合したものだそうです。
一部ですがネット上でも公開されています。
(帰ってきてから知りました。理系の夫はかなり詳しく知っていたという…。)

質問は受けつけませんといわれても、芸能レポーターのごとく、食い下がるとちょっとだけ説明が…。


そして、何よりもこれだけお醤油をこぼしても大丈夫という撥水力はスゴイ。

大雨のお茶会や立食パーティーで着る訪問着などには撥水加工されていると安心です。


ほんのわずかの風合いの違いにこだわるよりも、汚れるのが困るとか、縮むのが困るとか、
普段着ではない礼装や雨対策のためのものにパールトーン加工を施すのはありだと思います。

きものによってつかい分けていきたいですね。

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