文様の流行が生まれたのは、ヨーロッパよりも100年先をいっていた日本。
その文様の特異性について。

古来、文様を表すものは織であり、貴族階級の着るものは絹の紋織物であった。
庶民が着用したのは「布」といわれる麻であり、木綿は15世紀まで貴重品。
絹の中でも紬は庶民が着ても良しとされたのは、長い繊維が取れない屑繭を農閑期に時間をかけて糸にしたからである。当時は時間にかかる賃金はカウントされていない。

応仁の乱があり、京都が戦場となって織の供給ができなくなったことから、繍箔がでてくる。
武士階級の専有物であった染色技法(辻が花など)が町人を主体とする女性の小袖装飾へ応用されていく。
装いにおける新しさを意識して今までにない見る人の教養を計るような謎解き的な意匠も生まれた。

江戸時代の要素としてあった、文様で遊ぶ冒険がなされる世界。

第61回日本伝統工芸展にて日本工芸会奨励賞を受賞した作品。
友禅訪問着「群」 水橋さおり
遠目には菊尽くしの太い縞の意匠かとみえたのですが、近寄ってみると何と羊。
しかも1頭ずつ表情も形も異なっています。丸山先生が数えたところ360匹以上いるのだそう。
意外性や見立てがに作者の遊び心が溢れていて現代の友禅に風穴を空ける作品と評されていました。


江戸時代に諸大名が着用した裃の模様づけが発祥とされる「江戸小紋」
裃は柿渋を塗った和紙に文様を彫った型紙をつかって防染糊を置き引き染めしたもの。
江戸小紋は化学染料を混ぜてつくる色糊によるしごき染めの技法でつくられるものなので、江戸時代にはなかったもの。
江戸小紋という名は1955年(昭和30年)に小宮康助氏を重要無形文化財保持者に認定する時に、京小紋や型友禅と区別するために名づけられました。
江戸という名前がつかわれたのは、技法ではなく江戸時代の趣を伝承しているから。

江戸時代には今の江戸小紋(しごき染め)はないということ、そして長板中形との違いについて。
※松原伸生先生のレポートで工程に触れます。

こちらは、第61回日本伝統工芸展にて高松宮記念賞受賞を受賞した作品。
長板中形着尺「漣文」 松原伸生先生の作品
遠目ですと江戸小紋のようにもみえますが、両面糊置きの藍の浸染による長板中形です。


名前や捉え方は時代によって変わっていく。
その変遷と現代の作家にみる江戸時代の技と意匠についてのお話でした。
※型紙については後の講義レポでまとめます。