東京都美術館にて開催中の「バルテュス 展」(~6月22日)の内覧会へサーチ


世界中から集められたという、孤高の画家故バルテュスの大回顧展。
まだ見ぬ作品との出会いとなる鑑賞はもちろんですが、この日の内覧会には
バルテュス夫人の節子•クロソフカ•ド•ローラさんがいらっしゃるということで、
とっても楽しみにいたしておりました♪

節子夫人は大学時代にパリのプティ•パレ美術館で開かれる日本古美術展の選定のために
来日したバルテュスと出会い、恋に落ち、そして結ばれ、ヨーロッパで暮らしていらっしゃいます。

有名なお話ですが、日本文化をこよなく愛していたバルテュスは節子夫人に
「日本女性に一番似合うのは着物、なのになぜ着物を着ないのか」と問いかけたといいます。
以来、節子夫人は、海外でもほとんどの生活を着物姿でされることとなり、その暮らしぶりを
随筆として書かれ、様々なメディアで紹介されています。


自国の歴史や文化を知らず、今時のファッションという大きな波にさらわれて、
(それが流行の波に乗っているということなのかもしれませんが…)、周囲の人とあわせて
浮かないように、そして何より効率的にと考えてしまうのが、日本で暮らす今の日本人の姿。

節子夫人は多くの日本人が見失ってしまったたくさんのものを、異国の地で大切にされ
丁寧に暮らしつつ体現していらっしゃる方です。お会いできて嬉しい~(〃∇〃)ドキドキ


《日本の少女の肖像》
「節子のために 友の思い出に バルテュス」とフランス語で書かれています。
バルテュス初来日の時に節子さんと出会い、モデルになって欲しいと懇願し描いた作品。
節子夫人の随筆の中に「バルテュスは中々思うような作品が書けず、帰国を3度も延ばした」
とあったのですが、きっと別れ難かったのでしょうねぇ…。


《朱色の机と日本の女》
右側には作品の習作が同時展示されています。
そこには「浮世絵」の文字。外国人が日本語の漢字を書いたのではなく、
漢字の字体を絵として真似て書いたもののようです。

はだけた着物は右肩だけを残して腰紐だけが残っている…。モデルは節子夫人。
モデルや室内調度だけでなく、逆遠近法の画面構成も日本美術の影響が見られる作品。


《「トルコ風の部屋」の習作》
こちらもモデルは節子夫人。どちらも髪に鉢巻をしていらっしゃる。なぜだろう…。


ん?こんな作品もあるのね~と楽しませてもらったのはこちら。
《地中海の猫》

パリのオデオン広場にあるシーフードレストラン「ラ•メディテラネ(地中海)」
のために描かれた作品でレストランの店内に掛けられていたのだそう。
海から虹を伝って魚が猫の前にやってくるという構図が面白い。
このレストランの魚介類はとっても美味しそうに思えます。


もちろん、バルテュスの真骨頂といえる作品もたっぷり。大回顧展ですから。



そして今展覧会の見どころでもある、スイスのグラン•シャレのバルテュスのアトリエの再現。
今でもバルテュスの息づかいが聞こえるようです…。

未完成の「黄色い着物をきた日本の女」
この黄色のきものは、節子夫人が庭先の手入れや授乳時期に着ていた日常着なのだとか。


バルテュスの写真や愛用品も展示されています。
それにしても、きものが似合いすぎます。何て素敵なのでしょう…:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

バルテュスが着ている夏のきものと帯は俳優の里見浩太朗さんからの贈られたもの。

バルテュスは独学でどの流派にも属さず孤高の画家といわれました。


見失いかけている大切なものは、時として異国の地に残り伝承されていたりします。
節子夫人との美しい生活そのものが、バルテュスの作品のように思われました。

※撮影及び「きものカンタービレ♪」への掲載は主催者の方より許可をいただいたものです。

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