日本の自然布展 at 大宜味村農村環境改善センター / 琉球染織巡りの旅 その8 のつづき

「芭蕉布今昔展」の会期中に講演会とシンポジウムが開かれました。


前評判も高く大勢の方がいらっしゃることが予想されましたが、朝は那覇にあった雨雲が、
ちょうど講演会がはじまる頃に喜如嘉にやってきてしまったらしく、土砂降り雨
あまりの雨足の強さに足が遠のいた方もいらしたかもしれず、残念ですね(ノ_-。)

会場となった喜如嘉公会堂は芭蕉布会館の向かい側にあります。
芭蕉布会館の裏山は彼岸桜が満開でした*さくら*


京都市立芸術大学美術部教授のひろいのぶこ先生による講演会
「樹皮と草の皮の布、その可能性」

ひろい先生は日本だけでなく世界中の染織の産地を直接訪問し、つくり手の方から話を
聞き克明に記録をされてきました。時には自身も体験し、つくり手と同じ方向から見ること
によって、素材や技、そしてつくり手の想いを知ったのだそう。
芭蕉布との出会いが染織の研究を志すきっかけともなり、この地でこういう機会を与えられた
ことに縁を感じられたとのこと。


丹波藤布の藤の採取から糸づくり、大麻布の栽培から糸づくりなどの記録のお話や
世界各国の織物の原風景を訪ねられたお話などから。


お話の中から、いくつか印象に残った文言をφ(.. )

日本で靭皮繊維がつくられつづけているのは、平均寿命が伸びたことによって可能となって
いることもある。(喜如嘉のつくり手の方々の平均年齢を考えるとまさに…。)
日本列島は南北に長く文化も長い。→ヤポネシア
そして自然に多様性があることによって、他の国と比べると植物の種類が豊富。
自然布は首都圏から一定の距離がある交通の便が悪いところに残っている。
(喜如嘉は那覇から2時間、丹後は京都から1時間半、しな布はどこからも遠そう…)
本当のものから学ぶ機会をつくり、多方面から働きかけ、語り部として残していくこと。
豊かな暮らしはものの量ではない、ものの質である。


ひろいのぶこ先生著 人は何をまとってきたのか「織物の原風景~樹皮と草皮の布と織~」
植物の根と先端という部位による繊維の方向性に視点をすえて制作工程を現地調査した
記録の集大成。植物の採取から糸づくり、機織りまでの工程がイラストで解説されています。
韓国、中国、フィリピンの織りの風景の様子にも興味津々(-_☆)


amazonから購入できます矢印
織物の原風景―樹皮と草皮の布と機


染織文化講座の開講にあたって、自分が寄稿した文からの引用ですが、
~現代の生活ではきものはなくても困らないものですが、私たち日本人にとってのきものは、
ただ肌を隠すものでも寒さを凌ぐものでもないはず。
私は作り手には なれませんが、世界に誇れる民族衣裳であるきものを着る人でありつづけたい、
そしてそのためにきものの良さを知り、次世代へ伝えていきたいと願っています。

ー 朝香沙都子 「きものカンタービレ♪」主宰 ー

ひろいのぶこ先生の「つくり手の代弁者であり記録人」という姿勢は、私の目指すところ。
遠く果てない道ですが、光明も見えたような…。この旅はとても有意義なものとなりました。
染織どっぷりで美ら海もほとんど見ていない旅ですが、沖縄滞在3日目の海でみた夕日は
絵に描いたよう。


次はシンポジウム「自然布の行方」です(^-^)/

「きものカンタービレ♪」のFacebookページ矢印