草木染紬•染織作家の山岸幸一先生のお話
きもの カンタービレ♪

山岸先生の家は米沢の織物業でシャンタンなどのドレス生地や袴地、服地をつくる家業だっとのこと。常に力織機の音の中で育ちカチャカチャという音がしないと泣いてしまうぐらい、その機音は常に身近にあったのだそう。しかしボタン1つで人の手をつかわず生産性をあげることや完成しないうちに次々と流行のものをつくることに疑問をもち、家にあった高機を取り出して仕事の後に自分の手で織ってみたとのこと。どちらも同じ素材で織りあげて比べてみたところ、自分の手足を動かして織りあげたその生地は制作に一月半以上もかかったそうですが、素材を生かした風合いの仕上がりに、ものすごい満足感が得られたとのこと。軽くて柔らかく歳月が経つとともに増す光沢感に魅せられたのだそう。機械織りにはズレがないがつまらない、高機で織りあげたものは微妙なひずみがある。そこには忘れられかけている手仕事の良さがあると痛感させられたのだそうです。その違いの価値は機械織をやっていた経験があるからこそ掴んだものであるというお話。
きもの カンタービレ♪

日本古来からつかわれる植物染のもととなる植物をもってきてくださいました。
日本茜、最上紅花、紫草、沢蓋木、臭木、藍など。化学染料で染めたものは暗くなると見えなくなりますが、植物染料で染めたものに蛍光性があるので真っ暗闇の中でも見えるのだそう。
きもの カンタービレ♪
紅花を摘む→川の清流で花洗い→花踏み(素足で踏むことによって紅花の黄色がジワッと抜けるのを感じる)→花むし(太陽光で発酵させる)→花きりかえし(花むしの途中で霧を吹く)→花つき→紅花餅となる
約3kgの紅花が約200gの紅花餅になります。
きもの カンタービレ♪
この紅花餅をつかって真冬の雪の流水の川の中で冷し染めで染めるのが山岸先生の代表作である寒染紅花です。煮染めをしないのが特徴。厳しい刺すような寒さの中で染められる色は冴えた美しい色をつくりだします。
きもの カンタービレ♪

植物の素材の美しさを出すために不可欠なのは絹糸。現在の糸や真綿は化学染料染め向けになっていてセリシンが除去されすぎているとのこと。ないものはつくるしかない!ということで、山岸先生は養蚕もされています。そして乾燥繭ではなく生繭から糸をつくるのです。黄金繭の色素を抽出して白繭の絹糸に染めた織物もあります。黄金繭色素染は春来夢という名前。
きもの カンタービレ♪
野蚕も育て家蚕の糸の織地に交ぜて野蚕糸の光沢を利用した織物も。
きもの カンタービレ♪

ものを言わない繭、植物、そして道具。その特徴を生かし、人がその特徴を殺してしまわないように。ものをつくるときは目的だけを見ず相手を引き立てわかろうとすることが重要。

自然界からもらう命の美しさを織物で再現していくその想いが伝わるお話でした。