この地球の表面に棲息する文明人で、日本人ほど、自然のあらゆる形況を愛する国民はいない
ーエドワード•シルベスター•モースー

「明治のこころ~モースが見た庶民のくらし~」内覧会へ(~12月8日まで)
きもの カンタービレ♪

アメリカの動物学者のエドワード•シルベスター•モースは1877年(明治10年)から3度に
わたって日本を訪れます。日本では大森貝塚を発見、発掘したことが有名ですが、
彼が後世に残したものは、日本が失ってしまったもの。庶民のくらしのさまざまな記録です。
きもの カンタービレ♪

モースは日本人の暮らしや心根に魅せられ、様々なものをアメリカに持ち帰りました。
その生活道具のコレクションもスゴイですが、(土がついたままの下駄とか使い古しの束子とか)
何より彼が撮影した明治の日本の写真と詳細なスケッチに驚かされました\(゜□゜)/

服飾関係の史料は上流階級のものは残っているものがありますが、庶民の暮らしのものは
消耗品として捨てられ、現在にはほとんど残っていないのが実情です。
展示されていた日常着はモースのお嬢様がもっていたもので、左下の藍色のきもの下着は
身につけた写真も残っていると書かれていました。
きもの カンタービレ♪
衣服にはボタンも紐穴もホックも鉤目も紐も留針もない。ー全く合理的な考であるー
ただこの布で衣服を引き締める
  ーエドワード•シルベスター•モースー 
きもの カンタービレ♪

髪結い道具とモースによるスケッチと写真。
これらの写真はモースが撮影したもモノクロのものに後から挿し色しているのだそう。
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モースは女性の髪形に興味をもったようで、いくつもスケッチが残っています。
写生は後ろ髪を中心に目鼻は後から書き入れるという心配りをしたのだそうです。
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当時の女性は結婚が決まるとお歯黒の習慣が残っていました。黒は他の色に染まらないこと
から貞操を守る証として、江戸時代には庶民にも広がっています。明治になると政府によって
お歯黒禁止令がだされその文化は徐々に衰退していきます。
モースは1882年(明治15年)に、下男の妻がお歯黒を施す様子を写生しています。
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お歯黒道具の金盥など。鉄漿に五倍子を混ぜたものがつかわれます。
外国人はぞっとしたとありますが、現代でもぞっとするというか…時代劇でも公家の
設定以外ではあまりでてきませんね(^_^;)
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鏡がついた団扇。ありそうで今はないものですねえ。今見てもモダンで面白い!
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コレクションの中でビックリ仰天してしまうのが、砂糖菓子もそのまま残されていること。
明治時代の横浜新杵製のもの。蝋とコルクで密閉された瓶に貝の形の砂糖菓子が入ってます。
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海苔を干している様子
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厨子に子供の成長をを祈願する子安地蔵が安置されている巡り地蔵。これを背負って家々
を訪ね歩いたもの。モースは日本人の祈りの精神にも注目していたよう。
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子供の成長を祈ってつくられるもの。可愛らしい~♪
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モースは街の散策を好み、商いの様子なども事細かに見て記録しています。
看板に興味をもったようで、さまざまなスケッチと看板がありました。
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精密に明治の店先を再現したミニチュア模型。これは糸物屋。
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貴重な写真から垣間見える明治の生活
下駄屋
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呉服屋
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傘屋
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刺繍師
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モースは日本の陶器を好み日本各地から蒐集します。
ボストン美術館に約5000点あまり譲渡されましたが、モースの手元に残ったものは
ピーボディー•エセックス博物館に収蔵されました。
茄子型の醤油挿しと雀と稲穂が描かれた急須
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梅の花の乾山焼の香合と松の黒釉碗の乾也焼き(ビゲローからの寄贈品)
きもの カンタービレ♪
カモメの吉向焼の香合と誠志焼の皿
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安政年間に大坂で大流行し幕末から明治にかけて盛り場で人気だったという生き人形。
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モースは土がついたままの下駄や使い古しの束子などもアメリカに持ち帰りますが、日本の
生活そのものだけでなく、日本人の標本として生き人形を蒐集したのでは…との解説。
きもの カンタービレ♪

特設ショップとして、谷中の松野屋さんが出展ビックリマーク
美術品でも大量生産品でもなく、職人が自然素材でつくる日用品を全国から集めていらっしゃいます。
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こちらではお買い物することができますドキドキ
きもの カンタービレ♪
きもののお手入れに便利なシュロのブラシを購入しました(^-^)/
きもの カンタービレ♪

庶民のものは服飾品をはじめ消耗品であり何も残っていないというのが普通なのですが、
アメリカ人のモースは古き良き日本のありのままの姿を愛し、彼の目で見たもの選んだものを、
日本人にかわって大切に残しておいてくれました。日本人としては複雑な気持ちでもありますが…、

日本人の特に著しい性質は、彼らの自然に対する愛情である。彼らは単に自然を、その
すべての形状で楽しむばかりでなく、それを芸術家の眼で楽しむ。

この国の人々の芸術的性情は、いろいろな方法ー極めて些細なことにでもーで示されている。
子供が誤って障子に穴をあけたとすると、四角い紙片をはりつけずに、桜の花の形に切った
紙をはる。


ーエドワード•シルベスター•モースー

日本人が忘れかけていた日本が帰ってきているこの機会に、自然とともに四季とともにあった
日本本来の美しさを見直すのも良いと思います。
典雅なものや高度な技のものをみるというのとは違いますが、自分の中にも流れる何か、
日本人の魂の美しさを再認識できる展覧会です。
きもの カンタービレ♪

※会場内での撮影及び「きものカンタービレ♪」への掲載は江戸東京博物館さまより特別な
許可をいただいたものです。

きもの カンタービレ♪