友禅の重要無形文化財保持者でいらっしゃる二塚長生先生のお話
きもの カンタービレ♪
友禅の技法のひとつである糸目糊置きは、隣り合う染料が滲み混じり合うのを防ぐための糊置きの工程のこと。糊を置き染めた後水洗いすることによって糊が落ち白い糸目のような線が残るのが特徴。これによって日本画のような繊細な文様表現が可能となります。二塚先生はその糸目をデザインとした白上げの技法を追求し、脇役であった真糊をつかった糊置きによって生まれる線を意匠の主役とした友禅をつくられています。

生活を美しくすることへの慣習。きものはその時代を写す独特の美しいものの形の形式であり、きもののスタイルと同時に加飾の変化が見られるというお話から。
東洋の高い精神性と宇宙観についての見解も。きもの全体に柄を描いていくブロックとモザイクで平面をつなぐ発想は工芸のみならず絵画の世界から見ても高度であったとのこと。大胆であり繊細で優美なものを求める発想は、居住空間が狭く内側へものを考える国ならではであり、友禅染めという1つの染織技法が時代にもあっていたのではないか。
きもの カンタービレ♪

ものは全部都合のいいものにかえてはいけない。昔からあるもの1つでも変わらないものがあれば、限りなく本物に近い仕事ができる。材料、染料が変化しても、それはつかい手の意識でしかない。前向きに本流本道を歩めば歩むほど古いその当時のことを見直し美しさを追求することになる。それがつくり手の使命。
きもの カンタービレ♪
柿渋でできた筒紙と先金の糊筒
きもの カンタービレ♪
二塚先生の作品の文様をつくりだす主役の真糊での文様表現。美しい白場を生み出すのは毎日作業の積み重の賜物。
きもの カンタービレ♪

北陸メディアサンターの制作によるシリーズ北陸の工芸作家「石川の匠たち」というDVDを鑑賞。
二塚先生の「夏去る」の制作工程が追いかけられつくられています。
きもの カンタービレ♪

●工程●
加賀鴨池観察館にてスケッチ→雛形小下図(小さな雛形上に描く)→配置する鴨鷺を原寸大で書く→原寸大の図を制作(小下図を引き延す)→白きもの仮縫い→下絵うつし(仮仕立てしたきもの地に青花で原寸大の下絵図を写し取る)→もち糊つくり(もち粉、米ぬか、塩を加えてこね上げ、蒸し、突く)→伸子張り→糸目糊置き(外気が入らないように閉め切った部屋で作業、長時間一定のリズムで糊を置く時は瞬きもしない)→中埋め(線で囲まれた面に糊を置く)→米ぬかをまぶして乾燥させる→地入れ→地染め→蒸し→水元(糊がおちて防染された白い図柄が浮かぶ)→湯のし→顔料彩色→蒸し→水元→湯のし→仮仕立て

●完成● 友禅着物「夏去る」 2013年第47回日本伝統工芸染織展出品作
きもの カンタービレ♪

防染だけに留まらず糸目の美しさをどういうふうにデザイン化された中に表すか。そこには美意識が集約されている。友禅が美しいのは単なる色を塗ってあるからではなく、精神性が入ってきている。先人たちの仕事の大切さ、苦労の中身を分析しながらいいところを掘り起こしてみたい。
きもの カンタービレ♪

自分の世界を深めていきたい。例え友禅的でないといわれてもいい。伝統はそれぞれの心の中においてあり、それを自分の血肉にかえて表現する。言葉にだすものでもない。心で考え結果と伝統として表せれば良い。

作品づくりもその精神性も感動するお話でした。