染織文化講座 第二回は龍村美術織物の現社長と顧問の方による講義。

龍村美術織物 四代龍村平蔵 龍村旻先生によるお話
きもの カンタービレ♪

龍村美術織物は初代龍村平蔵が1894年(明治27年)に創業。
両替商の家に生まれた平蔵は呉服商の叔父の影響を受け織物の世界へ入ります。
従来にない独創的な織物をつくりたいという思いから新技術の開発に打ち込み、数々の新しい
織物を開発、ジャガード機の導入によっていっそうの図案の重要性を見抜き、優れた図案家の
育成にも力を入れます。
さらに、法隆寺裂、正倉院裂、そして名物裂と古から残された織物の復元のための研究。
裂を分析し正確に模倣し復元することによって高度な技を習得し、糸の性質を巧みに利用して
立体感のある織物を創造してきました。温故知新の哲学だそうです。

展示された「龍村の帯」。復元された意匠から高度な技を生かした斬新的なものまで。
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講義のテーマは「織の創造」
どんな複雑な織物も経糸と緯糸から形成されています。
スライドをみながら、紋織物の種類の解説がありました。

●紋織物の種類●
経糸をコントロールして織られるもの(経錦、緯錦、綟り織)
緯糸をコントロールして織られるもの(綴織)

「円文白虎朱雀錦」
法隆寺伝来の日本で最も古い紋織物のひとつ。飛鳥時代のもの。
忍冬風唐草と小連珠を廻らした円文内に中国の瑞祥文である四神文の白虎と朱雀、間
には双馬文と双鹿文を交互に配した経錦。
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経錦(たてにしき•けいきん)について。
古代中国の漢から隋の頃に最も織られた経糸で文様をあらわすもの。
数種の色糸(3本が限界)を1組にして織りあげます。
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赤、緑、白、黄の経糸の構造を説明
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「花樹対鹿文錦」
中国・トルファン盆地のアスターナ古墳から発掘された裂地を3代龍村平藏が復元したもの。
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黒、黄、白、茶の緯糸で
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経糸がほとんどわからない。文様は緯糸であらわされています。
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綟り織の羅の構造について。
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綴織のひとつ、中国の剋糸(こくし)は絹、ヨーロッパのゴブラン織は糸が太いウールが主流
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剋糸織の老人の眼の部分。経糸を緯糸が包んでいます。
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ジャガードの原理についてと織られる基本組織についての説明。
綾織りは斜交いに織るので締めやすい、なのでネクタイの生地としてつかわれる、
繻子織は経糸と緯糸の交差が少ないので柔らかいなど。
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●龍村美術織物の復元品について●

「香雲立涌文固綾」 熊野速玉神社の衵の生地を復刻したもの。
雲立涌文は有職の装束で指貫袴の地紋につかわれます。
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「冨田金襴」 霊芝雲に宝尽くし文様。茶道具につかわれる名物裂のひとつ。
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「金地二重蔓大牡丹金襴」 拡大してみると地紋は入り子菱で埋められています。
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●織物の可能性を広げた龍村の芸術的織●

「丸帯 纐纈織大政所裂文」  
地と文様の組織の他に経糸も緯糸も強撚糸をつかって織られた二重織で織りあがった後に
蒸熱処理を施して強撚糸を収縮され凹凸をだす技法はまるで鹿の子絞りのようにみえる織物。
この脹織が纐纈織。龍村展でもとくに印象的でした。
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「威毛錦(おどしげにしき)」 龍村錦帯の代表作ともいえる作品
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「円文白虎錦」 初代平蔵の作品
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●展示された「龍村の帯」●

「赤地小葵文錦」
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「ぎやまん錦」
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「光悦夢蝶錦」
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「煬帝栄華錦」
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「可祝獅子文」
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初代龍村平藏は「どんな複雑な組織の織物も、経糸と緯糸によって構成されている」
ということから、偶数で割り切れる数学的な織物から、割り切れない芸術の美の世界を
構築することを考え新技法の開発に取り組み新しい芸術的な織物を完成させました。
今もその精神は引き継がれ、復元への探究心から得た技を創作へ発展させています。

さらに細かく、復元の工程の解説の講座につづきます。

※龍村美術織物のHP及び龍村平蔵「時」を織る。展の図録を参照し補完させていただきました。