琳派にまつわる美術展はさまざまなところで開催されていますが、山種美術館の今展覧会
コンセプトはいつもながら興味深いです。
何度か目にしているものもあるのですが、企画によってまた出会えると嬉しくなってしまいます。
きもの カンタービレ♪

山種美術館所蔵のみならず滅多にお目にかかれない貴重な琳派の作品が展示されるのも
然ることながら、琳派の絵師たちに影響を与えた、和歌そして古筆切と料紙装飾から
琳派を楽しむという展示となっていますサーチ

山﨑妙子館長さまによるギャラリートークのお話を交えてまとめてみましたφ(.. )

会場で一番最初に眼に入るところには、掴みの作品を展示するのだそうです。

俵屋宗達(絵)本阿弥光悦(書) 「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」
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益田孝(鈍翁)が所有する22mにもなる長巻だったのですが、断簡してしまいシアトル美術館、
五島美術館、サントリー美術館、MOA美術館、サンリツ服部美術館などが所有しています。
個人所有のものもありますが、行方がわからないものもあるのだそう。
「心なき 身にも哀れはしられけり しぎたつ沢の 秋の夕暮れ」西行
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古筆切とは経典や詩歌などの巻物の断簡のこと。
桃山から江戸時代にかけて古筆切を愛でることが流行し、掛軸にしたり古筆切を台紙に
貼る手鑑(古筆切アルバムのようなもの)で鑑賞するようになります。
こうした伝統が後世の琳派の画家たちへ影響を与えているとのこと。
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書を書く紙である料紙。いつも表装に眼を奪われていてあまりじっくり鑑賞していなかった
のですが、波に千鳥なのでしょうか。よく見たら、琳派に影響を与えたということに納得ひらめき電球
藤原定信「石山切(貫之集下)」 
きもの カンタービレ♪きもの カンタービレ♪

静嘉堂文庫にある同名の国宝指定のものとは別物ですが、ほぼ同じ構図。
今展覧会が初公開なのだそう。宗達ではなく、工房の作品とのことでしたが、
いかにも宗達らしい悠々としたもので見応えありました。
俵屋宗達(款)「源氏物語図 関屋・澪標」
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ラグビーボールのような月は銀が退色したものかと思っていましたが、はじめから
意図して描かれていたものだそう。金地に映えるようにでしょうか。面白いですね~。
酒井抱一「秋草鶉図」
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勾勒(こうろく)法による花鳥画を得意とした北宋時代の画家の李安忠の影響を受けて
いるというお話があった鶉。羽のホッコリとした質感まで繊細に描かれています。
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伊勢物語の第九段「東下り」が描かれた有名な作品。
「からころも着つつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」
尾形乾山「八橋図」
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尾形光琳「四季草花図巻」
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琳派のデザインは、全部絵の中に収めるのでなくトリミングされていて広がりをつけている
というお話がありましたが、こちらもその影響が見られる絵でしょうか。

下村観山「老松白藤」
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きものの意匠でもつかわれる松に藤。
枕草子では「色合ひよく花房長く咲たる藤の松にかかりたる」と書かれ、
松は男性、藤は女性で常緑の松にたおやかに懸かる藤の姿は美しさの象徴でもあります。
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小茂田青樹「春暁」
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鳥好きの私。意匠も構図的にも気に入っていますドキドキ
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西洋や中国では左右対称の二幅対だけれど、日本は四幅対や三幅対が多いというお話。
季節にあわせて展示していたそうですが、「四季によって月の大きさが違うのですね」
という声を聞いて、四幅対での展示にしたのだそう。
菱田春草「月四題」
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山﨑妙子館長の研究テーマが速水御舟であるとお聞きしていますが、子供の頃はこの軸は
季節になると自宅の床の間に飾りお爺さまとともに鑑賞し愛でられたというお話がありました。
こういった美が常に生活とともにある環境で育まれた審美眼は羨ましい~:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
速水御舟「白梅」「紅梅」
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「女性が美しく豊かな生活が送れるよう、琳派絵画が着物の着こなしの参考になれば…」
というお話も。この日は琳派を意識された着こなしの方もたくさんいらしたのですが、
こういったテーマで装うのも楽しいですねo(^▽^)o

琳派とは家系を引き継ぐわけではなく直接習うわけでもない、同傾向の表現手法を引き継ぐ
流派のことなのだそう。現代まで受け継がれるもの、その元となった和歌や物語などを
紐解いていくとさらに面白そうです~。

他にもご紹介したい作品がたくさんあったのですが、わずかな時間内での撮影でしたので、
この辺で。前期展示は~3月3日まで。後期展示は3月5日~31日までです。

※山種美術館さまからのご好意により展示室内は特別鑑賞会とは別の時間に取材撮影
させていただいております。


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