老舗百貨店のいいところは、その道の超一流の先生方の実演や講演があることでしょうか。
押し売りされることもなく、直接お話を聞くことができて、さらに技も見せていただけます目

絽刺し工芸作家の坪倉鳳祥先生による実演(~17日まで)
技法だけでなく、絽刺しの歴史についても詳しく教えてただきました。
きもの カンタービレ♪

絽刺しとは、刺繍の技法のひとつ。
奈良時代には日本へ伝来していたようですが(東大寺創建の折に絽刺しの敷物が献納されている)
江戸時代に京都の宮中での手慰みとして流行し公卿絽刺といわれていました。
徳川家の女性たちや大名家にも伝わり佐賀錦同様に上流婦人の細工物として嗜まれたのだそうです。
きもの カンタービレ♪
夏のきもの地で見られる絽目のある生地(張りがある絽刺し用の生地)に絽刺し用の強撚糸
を用いて、上から下へと規則的に絽目に糸を通して絵図のように文様を表します。
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裏から見るとこんな感じ。唐織や刺繍よりも強い糸が固く通されているので、とても丈夫。
引っ掛けてしまって糸が浮いてくるようなことはないそうです。
きもの カンタービレ♪
絽刺しは部分でなく、面いっぱいに画のようにつくられます。左が表面で右が裏面。
周りの白い絽の部分は縫い込み代部分。
きもの カンタービレ♪きもの カンタービレ♪

絽刺しされたものは、縫い代部分を残して切り抜かれて、刳り貫かれた帯地に切り嵌めされます。
左側がお太鼓部分、右側が前柄の前と後。
きもの カンタービレ♪

絽刺しは明治になって廃れますが、大正から昭和初期に再び脚光を浴びます。
絽刺しの婚礼衣裳や帯が上流の証とされ、男性用の煙草入れや財布としても普及。
旧制女学校の教科のひとつにもなっていました。
戦後は再び廃れてしまったそうですが、パッチワークの細工物としては今でもつくられている
のだとか。切り嵌めの技術をつかった絽刺工芸帯をつくっているのは坪倉先生だけだそうです。
きもの カンタービレ♪

坪倉先生は絽刺し糸にもこだわりをもっていらっしゃって、茜草の浸染を4,6,8回で濃淡を
だした糸や貝紫から抽出した糸がつかわれています。
きもの カンタービレ♪きもの カンタービレ♪

切り嵌めの工程は切り嵌め師の職人、帯は帯職人と、それぞれの工程にその道の一流のプロ
がいて、分業制によってつくられていて、どの工程が欠けてしまっても、絽刺工芸帯をつくる
ことはできないというお話でした。
この帯、とっても可愛い(≧▽≦)ドキドキ 。でもお値段が可愛くない…。
袋帯だったので、なごや帯なら手に届くぐらいにならないかしらっと思ってお聞きしたところ、
絽刺しの部分と切り嵌めの工程にかかる手間は袋帯でもなごや帯でも同じ。帯は切り嵌めに
耐えうる良いものでないとつくれないので、需要のある袋帯になってしまうとのこと。
今は、きものを着る=よそいき なので、なごや帯よりも袋帯のほうが売れるのだそうです…汗
きもの カンタービレ♪

大変勉強になりました! 
きもの カンタービレ♪

「Kimono Beauty ~シックでモダンな装いの美 江戸から昭和~」その3
は、後ほどあげます(^-^)/


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