夏の意匠に多い波に千鳥文様ですが、俳句で千鳥は冬の季語です。
学術的にいうとチドリ目チドリ科の鳥は世界中に60種いるそうですが、日本で千鳥といわれ
ているのは野山や水辺で群をなす小鳥の総称。多くが群れるから千鳥といわれるとも
「チチチッ」と鳴くから千鳥といわれるともいいます。
竺仙さんの長板中形の浴衣の波に千鳥
婦人画報2012年7月号の付録のハンドルポーチと同じデザインですね。
竺仙さんの綿コーマの注染の浴衣の千鳥
千鳥がふくよかにデフォルメされて描かれるようになったのは江戸時代になってからだそうで、
それを究極に図案化した文様が千鳥格子です。千鳥が群れて飛んでいるように見えなくもない?
欧米ではハウンズ・トゥース(猟犬の歯)、フランスではピエ・ド・プール(鳥の足)といいます。
デフォルメされていない千鳥の文様のきものや帯は、アンティークものではありますが、
今ではほとんどつくられていないのか、見かけません…(ノ_-。)
今のデザインの主流は花ですら抽象的なものばかりなので…、花鳥風月を愛し、とくに
鳥好きとしてはアンティークものを探すことになります。
左◇アンティークきもの屋さんで見つけた銀砂子に千鳥の絽塩瀬の帯
右◇竺仙さんでつくられている初代桐山紫香さんの流水に蛇籠に千鳥の麻の帯
2009年度きもの文化検定1級ではこんな問題が出題されています。
【問37】
文学が庶民の間で流行した江戸時代、文学模様の小袖が多く作られました。詩歌を元に
した蒔絵文様から採った「波と磯に鶴」を描く「和歌之浦蒔絵」はその代表の一つですが、
では、「波と磯に千鳥」を描いた文様を一般に何と呼んでいますか、答えなさい。
【答】
塩山(しおのやま)蒔絵文様
※室町時代、美しい海岸風景は信仰の対象となった。それらの風景はしだいに愛でられるように
なり蒔絵文様として盛んに取りあげられるようになった。その中でも、特に「塩の山の浜」と
「和歌の浦」の風景が好まれた。(きもの文化検定問題集原文ママ)
「しほの山 差出の磯にすむ千鳥 君が御代をば 八千代とぞなく」古今和歌集7巻より
この歌を題材にしてつくられたという「塩山蒔絵硯箱」です。京都国立博物館蔵
蓋裏にも意匠が描かれています。
気になったので調べてみると、しほの山 差出の磯にすむ千鳥、の塩山の差出の磯とは
海辺ではなく、山梨市の笛吹川沿いの景勝地のことでした。内陸でありながら磯のように
見える岩山と河川なのだそうです。万葉集にも詠まれています。
問題で例に出された「和歌之浦蒔絵」。
「和歌浦に汐みちくれはかたをなみきし邊をさして田鶴啼きわたる」万葉集 山部赤人より。
こちらの歌を題材とした「和歌浦蒔絵見台」石川県立美術館蔵は加賀蒔絵を代表する
清水九兵衛の作と伝えられています。
和歌浦(わかのうら)は和歌山市南西部にある景勝地。山部赤人が歌を詠んだ聖武天皇の
御世の頃は水生植物が生い茂る湿地帯だったのだそう。その頃は鶴がいたのかな…。
寛文7年(1667年)に発刊された「御ひいなかた」に「和歌浦波もよう小袖」というのが
ありましたが、和歌浦の波と葦手文字が描かれています。
葦手とは、詩歌の一部を画の中に隠して歌の意味を暗示させる文様のこと。
葦のような水草や木や水、岩や鳥などで表されていることが多いです。
きもの文化検定の問題は、そんなのきものと関係ないじゃない!というような問題が多いの
ですが、人々がきもので生活していた時代は文化がきものに反映されていたわけで、
文化と生活様式を含む歴史を学ぶことも、きものの勉強です。何より面白いです
学術的にいうとチドリ目チドリ科の鳥は世界中に60種いるそうですが、日本で千鳥といわれ
ているのは野山や水辺で群をなす小鳥の総称。多くが群れるから千鳥といわれるとも
「チチチッ」と鳴くから千鳥といわれるともいいます。
竺仙さんの長板中形の浴衣の波に千鳥
婦人画報2012年7月号の付録のハンドルポーチと同じデザインですね。
竺仙さんの綿コーマの注染の浴衣の千鳥
千鳥がふくよかにデフォルメされて描かれるようになったのは江戸時代になってからだそうで、
それを究極に図案化した文様が千鳥格子です。千鳥が群れて飛んでいるように見えなくもない?
欧米ではハウンズ・トゥース(猟犬の歯)、フランスではピエ・ド・プール(鳥の足)といいます。
デフォルメされていない千鳥の文様のきものや帯は、アンティークものではありますが、
今ではほとんどつくられていないのか、見かけません…(ノ_-。)
今のデザインの主流は花ですら抽象的なものばかりなので…、花鳥風月を愛し、とくに
鳥好きとしてはアンティークものを探すことになります。
左◇アンティークきもの屋さんで見つけた銀砂子に千鳥の絽塩瀬の帯
右◇竺仙さんでつくられている初代桐山紫香さんの流水に蛇籠に千鳥の麻の帯
2009年度きもの文化検定1級ではこんな問題が出題されています。
【問37】
文学が庶民の間で流行した江戸時代、文学模様の小袖が多く作られました。詩歌を元に
した蒔絵文様から採った「波と磯に鶴」を描く「和歌之浦蒔絵」はその代表の一つですが、
では、「波と磯に千鳥」を描いた文様を一般に何と呼んでいますか、答えなさい。
【答】
塩山(しおのやま)蒔絵文様
※室町時代、美しい海岸風景は信仰の対象となった。それらの風景はしだいに愛でられるように
なり蒔絵文様として盛んに取りあげられるようになった。その中でも、特に「塩の山の浜」と
「和歌の浦」の風景が好まれた。(きもの文化検定問題集原文ママ)
「しほの山 差出の磯にすむ千鳥 君が御代をば 八千代とぞなく」古今和歌集7巻より
この歌を題材にしてつくられたという「塩山蒔絵硯箱」です。京都国立博物館蔵
蓋裏にも意匠が描かれています。
気になったので調べてみると、しほの山 差出の磯にすむ千鳥、の塩山の差出の磯とは
海辺ではなく、山梨市の笛吹川沿いの景勝地のことでした。内陸でありながら磯のように
見える岩山と河川なのだそうです。万葉集にも詠まれています。
問題で例に出された「和歌之浦蒔絵」。
「和歌浦に汐みちくれはかたをなみきし邊をさして田鶴啼きわたる」万葉集 山部赤人より。
こちらの歌を題材とした「和歌浦蒔絵見台」石川県立美術館蔵は加賀蒔絵を代表する
清水九兵衛の作と伝えられています。
和歌浦(わかのうら)は和歌山市南西部にある景勝地。山部赤人が歌を詠んだ聖武天皇の
御世の頃は水生植物が生い茂る湿地帯だったのだそう。その頃は鶴がいたのかな…。
寛文7年(1667年)に発刊された「御ひいなかた」に「和歌浦波もよう小袖」というのが
ありましたが、和歌浦の波と葦手文字が描かれています。
葦手とは、詩歌の一部を画の中に隠して歌の意味を暗示させる文様のこと。
葦のような水草や木や水、岩や鳥などで表されていることが多いです。
きもの文化検定の問題は、そんなのきものと関係ないじゃない!というような問題が多いの
ですが、人々がきもので生活していた時代は文化がきものに反映されていたわけで、
文化と生活様式を含む歴史を学ぶことも、きものの勉強です。何より面白いです