かっこちゃんの心温まる話(雪絵ちゃんの願い Part3) | 脳内出血を起こし障害者になりましたが、残りの人生楽しんでいきます

私は雪絵ちゃんがどんなに悪くなっても、どんなに危ないと言われても、いつも雪絵ちゃんは絶対に大丈夫だとなんだかそんなふうに思っていました。けれども亡くなったという報せを聞いたときに、私は雪絵ちゃんは今日亡くなろうって自分で決めたのかなってなんだかそんな気がしました。雪絵ちゃんはいつもいつも、なんでも自分で決めていたんです。クスリを飲むか飲まないか、入院するか退院するか、そういうことも自分で決めていました。

「だって、私の人生だよ。誰が私の人生に責任を持てる? 誰も持てないよ。でも私なら持てる。私が決めたことだったら、がんばれるし、誰のことも恨まなくてすむからね」ってそう言っていたんです。だから、雪絵ちゃんは今日亡くなろうって自分で決めたのかなって思いました。雪絵ちゃんのおうちに行ったら、お母さんが待っていてくださいました。

 そして、雪絵ちゃんのお部屋に通してくださったんです。雪絵ちゃんの枕元には姪っ子さんや甥っ子さんが楽しそうに遊んでいてね、あのお本当に優しい顔で、眠っているみたいでした。

お母さんは不思議なことをおっしゃるんです。「この子はね、今日亡くなろうって自分で決めたんだと思います」って。

「どうしてそう思われるんですか?」って言ったら、「この子は、年が明けたら、一月になったらね、大きな病院にかわることに決まっていたんです。その病院はこの子が絶対に行きたくないと言っていたとても遠い病院でした。この子は家が好きでしたから、そこには行きたくないといつも言っていたんです。この子はお正月も自分の誕生日も、みんなね、自分の家ですごそうと決めていたんじゃないでしょうか」とお母さんがおっしゃいました。

 そしてお母さんが、「不思議なんですよ。この子は、今日亡くなって、明日27日がお通夜で、28日、お誕生日がお葬式なんですよ。この子はね、お誕生日がいつもことさら大好きで、大事な日、大切な日と言っていた。その日にお葬式なんですよ。あっぱれな子ですね」とおっしゃいました。

「私は実は今日、ここにいないはずだったんです。飛行機が飛ばなかったので」と言いました。

 お母さんは、「あの子は、先生にいてほしいために、飛行機までとめてしまったんですね」とおっしゃいました。そして、きっと、お通夜やお葬式の席じゃなくて、今日、ここで先生とお別れがしたかったんでしょう。あの子は先生と行った温泉旅行がすごくうれしかったようで、その話ばっかりしていましたから、この子をソウルに連れて行ってやってください」と言ってくださいました。

 それで、私は雪絵ちゃんのお通夜にも、お葬式にも出席していません。雪絵ちゃんと一緒のつもりで、飛行機に乗り込みました。けれども、私は雪絵ちゃんのことばっかり考えてね、雪絵ちゃんはいつもいつも、「私でよかった。私の人生を後悔しない」って言っていたけど、でも、やっぱりつらくて悲しい人生だったんじゃないだろうか、そんなふうにも思ったりもしました。また、雪絵ちゃんは負け惜しみを言っていたんじゃないだろうか?と思ったりもしました。けれども、またこれも本当に不思議なんですが、私の鞄のなかに雪絵ちゃんからのエッセイが、手紙が一つ入っていたんです。それはこんな手紙でした。

誕生日

私今日生まれたの。

一分一秒のくるいもなく、今日誕生しました。

少しでもずれていたら、今頃 健康だったかもしれない。

今の人生をおくるには、一分一秒のくるいもなく生まれてこなければいけなかったの。

けっこうこれってむずかしいだよ。

12月の28日、私の大好きで大切で幸せな日、

今日生まれてきて大成功。Snowに生まれてきて、これまた大成功。

 雪絵ちゃんはやっぱり自分に生まれて、大成功、大正解って思ってたんだなあというふうに思いました。それでも、私は、雪絵ちゃんが亡くなったことを、なかなか受けとめることができませんでした。毎日毎日泣いていました。悲しくて悲しくて。そして、私は自分勝手な人間だなあって思うんですけど、雪絵ちゃん、なんで亡くなっちゃったの? 誰が私の話を毎日聞いてくれて、「よかったね」って言ってくれるの?ってそんなことを思っていたりしました。ごはんも食べられないし、寝られないけれど、でも、ベッドの中に入って…。学校のある間は学校にいるからいいんですけど、帰ってから、本当に何もできなくって、もうこのままじゃね、私もだめになってしまうのじゃないかなあって。体重もどんどんやせていったんですね。

 そしてまさにそんなときに、まるで背中をぽんぽんとたたかれたみたいに、あることがぱっと思い出されたんです。なんか電気が走ったみたいなくらいだったんですけど…それは雪絵ちゃんとした最後の約束でした。私が、最後に雪絵ちゃんと長い会話をした日。

その日、雪絵ちゃんは、「かっこちゃんにどうしても頼みたいことがあるから、家に来て」って言ったんです。そして出かけて行ったら、雪絵ちゃんは「今から話すことを絶対にきいてほしいお願いがあるの。絶対にだめって言わないでほしい」って何回も何回も念を押すんです。

「私、雪絵ちゃんのお願いだったら何でもきくじゃない。雪絵ちゃんは今まで私に、お願いなんかしたことないじゃない。なんだってきくから言って」って。

そしたら雪絵ちゃんは「本当だよ」ってまた念を押して、こんなふうに言いました。

「かっこちゃん、前にね、障害とか病気とかとっても大切なんだよ。科学的にも証明されているって言ったよね」って。「言ったよ」って私が言うと、「人は障害があるとかないとか、そんなことじゃなくって、誰もがみんな大切だっていうことも科学的に証明されているって言ったよね」

「言ったよ」

「じゃあ、それがね、世界中の人が知っている世界にかっこちゃんがして」って雪絵ちゃんがそう言いました。

「なんでそんなこと私ができるの?」って私すぐに言おうと思いました。

そうしたら、雪絵ちゃんが「言わないで」って止めるんです。

「何も言っちゃだめ」って。

 私は雪絵ちゃんがあんまり真剣だから、そのときね、「わかったよ」って言ってしまったんです。だけど、できるなんてことはぜんぜん思っていません。できるはずがないと思っていました。

でも、雪絵ちゃんはそのまま亡くなってしまいました。

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凄いお話ですね・・涙が止まりません。

かっこちゃんはこの約束を映画『1/4の奇跡~本当のことだから』で果たしました。

雪絵ちゃん、ありがとう。ありがとう。