今回は今年の干支にちなんで「牡牛座」の話を
牡牛座はギリシア神話では
ゼウスの化身とされています
フェニキアの王女エウロパ(Europa)という娘に近づくために
ゼウスが牛に姿を変え
彼女を背中に乗せて駆けめぐり
落ち着いたところがクレタ島
そこでゼウスが産ませた子供が
クレタ王ミノスをはじめとする兄弟
ちなみにエウロパ(Europa)の名が
今日のヨーロッパの語源とされており
ギリシアのユーロ硬貨の裏面は
彼女が牡牛の背中に乗っている図柄のようですね
天上にはゼウスの化身が三つ星座になっていますが
その一つが秋から冬の星座である牡牛座
あとの二つは夏の星座です
美少年ガニメデを連れ去るためにゼウスが鷲に姿を変えたわし座
スパルタ王妃レダに近づくために白鳥となったのが白鳥座
これらはいずれもゼウスが動物に変身したのですが
愛するものに近づきあるいは奪うために化生した姿
下の写真は牡牛座からぎょしゃ座、ペルセウス座付近です
ちょっと構図ミスで牡牛座の頭部にある一等星アルデバランとヒアデスの姉妹たち(ヒアデス星団)が画面中央下ぎりぎりになってしまいました
右側中央にあるのがM45プレアデス星団「昴」で、これも牡牛座に含まれます
下から左上に牡牛の角が伸びた先がぎょしゃ座
冬の銀河が左下から斜め右上へと帯状に伸びています
銀河の中に赤い星雲がありますが勾玉状に見えるため、「勾玉星雲」と呼ばれています
左上にある明るい星がぎょしゃ座の一等星「カペラ」
右上、ペルセウス座にある赤い帯状の星雲はカリフォルニア州と形が似ているので
「カリフォルニア星雲」という名前がついています
これらの赤い星雲は肉眼では見えず写真に写してはじめて浮かび上がってくることは
以前記事にも書いた通り
ゼウスは動物以外のものに姿を変えたこともあり
アルゴス王女ダナエへの想いを遂げるためには黄金の雨となっています
恋する女性に黄金の雨となって降り注ぐ
黄金の雨、私はこれが一番ゼウスの化身としては好きです
私が好きなクリムトの絵でも有名ですね
ダナエと黄金の雨の神話はクリムトの画風に最も良くマッチするモチーフだと思います
そういえば1月3日のしぶんぎ座流星群ご覧になりましたか
私は暗い空を求めて林を歩き
10数個まで数えましたが
流星は夜空に注ぐ金銀の雨のようです
ゼウス以外にも星座には
おおぐま、こぐま座、山羊座、魚座、メデューサの首等
変身譚がいくつもあります
変身譚は古代のアニミズムに基づく神話から現代の文学まで
非常に数多く存在しますが
最近のものでは「千の風になって」もその典型でしょう
人はなぜ古来多くの変身譚を創り出してきたのか
あるときは良き性質の純化した理想像
かなわぬ姿への憧憬、亡くした人への追慕
あるときは堕落の象徴、罪への警句、贖罪の姿
生の不条理、あるいは恋愛悲話
それらの物語になぜ惹かれるのか
リアリズムが嫌いでファンタジーが好きな私は
とりわけそういう話が好きです
妖しく艶めかしい世界
青い絶望の淵
自然への同化
宇宙との交感
そういう世界へと誘ってくれる魔力があるように思えます
これからの記事の中でも変身譚について触れてきたいと思っています
自然の化生とした写真を添えて