父が亡くなってから10年ほど経った。彼は複雑な家庭環境で育ち、典型的なアダルトチャイルドだった。しかし、自覚することも教えてくれる人との出会いもなく・・・カッとなると暴言・暴力の衝動を抑えることができない人だった。
当時の私は、教育虐待を受けて育った。いろいろ習い事をさせられ、いつでも家族優先。父親の顔色を伺い、そうしなければ母親から泣き落としや恨み言でプレッシャーをかけられる日々だった。経済的には恵まれていた方だと思う。欲しいものはたいてい買ってもらったし、海外旅行も留学もした。でも自由が与えられるのは、あくまでも、父にとって好ましかったりどうでもいい事柄についてだけ。自分の人生を左右するような大きな決断は、常に父親の判断に委ねられた。
父が早期退職をした頃、私は家を離れてようやく自分の人生を取り返すと決めた。そしてまもなく、父は若年性認知症を発症。初めて行く目的地には着けなくなり、小学校低学年向けの計算ドリルや漢字ドリルをやり直す姿を見た。そのうち近所から家に帰ることも困難になり、自分がなぜ・どこへ向かっているのかを忘れるようになった。まだらぼけが進み、孫が増えても認識できるのは初孫だけ。あれほど執着していたひとり娘のことも忘れ、ついには世話をしてくれる妻のことすらもわからなくなり、大きな赤子のようになった。
私は父のしたことを、まだ完全には許せていない。期待した点数に足りないと頬をつねられ、平手打ちをされ、冬の寒空のなか家から追い出されて靴下で外に立つ屈辱。中2のときには、腰まであった髪を耳の下から斜めに切られたこともあった。「俺が差し入れを持って行ってやったのに寝てるなんて許せねえ」「こんな無駄に髪なんか伸ばしてるからだ!切っちまえ!!」私は寝ぼけたまま突然髪をつかまれ、どうすることもできなかった。翌日は遠足で、休むこともできず、教員たちの「失恋したのか?(笑)」「イメチェン?」など無神経な発言を浴びることになった。(そんな父親のしでかしがあっても、娘の味方をしなかった母親も最低だ。)
「おまえみたいな人間は、普通に働くことなんてできない」と脅す一方、「もっとやれる、どうしてできないんだ」と圧をかける父。「好きにすればいい」と言った直後「そっちを選んだらどうなると思う?おぼえてろ!」と毒を吐く母。ダブルバインドのせいで、頭が混乱させられた。贅沢な暮らしに慣れ、自立心の芽を摘まれた。
そんな風にして、30歳手前まで人生を乗っ取られていた。周りに人がいると、どう思われるかが気になって、自動販売機のジュースひとつ選ぶのに苦労する自分に戸惑う場面を今でも時折思い出す。
いちばんの罪は「おまえにとって良いことは、親の自分がいちばん良くわかってるんだ」と言われ、思考停止が常態になってしまったこと。外からはそう見えなかったようだが、本物のダメ人間だったと思う・・・
さて。死んだ人の悪口を盛大に書いているが、父のことを恨んではいない。それは書いておく。父が亡くなって間もない頃は、お寺で修行中の姿を二度ほど夢で見かけてうれしかった。
久々に父からのメッセージを受け取りたくて、今日のオラクルを選んだ。
今日使ったカードは Talking to Heavean
引いたのは We are soul mates.
正直なことを書くと「なんて厚かましい」と思った(笑)あんなひどいことをしておいて、よくもまあ抜け抜けと、と・・・
父からのメッセージを自分なりに訳して書いてみる。
『共生的な人生の目的を持つ、同じ魂のグループからやってきた私たちの人生が交わったのは必然でした。お互いに支え合い、成長し、学び、愛するために、ともに地球に来たのです。時にそれは、お互いを許す力や忍耐を試すような、痛ましい状況を意味しました』
『あなたに与えてしまった痛みすべてに、心から謝りたいです。どんなときも、私は最善は尽くしていました。でも時々、自分の能力が圧倒的に足りないと感じました。どうか、私に対して抱えている怒りを手放してください。私のためではなく・・・あなた自身のために。私が、なんらかの形で、あなたの成長や学びの助けになっていたらと願います。』
アダルトチャイルドとして、父は最善を尽くしたのだろう。自分が苦労したことを娘にさせないように、環境を整えた。自分は親の関心を引けなかったから、娘のことは何でも知ろうとした。自分がかなえられなかったことを、娘を通して実現しようとした。
ただ、致命的なことに、娘のこころを守り育むことには関心がなかったし、そもそも無理だったのだ。自分で自分を満たすことができない人だったから、穴を埋めるために娘が必要だったのだろう。
その結果、私は、自己肯定が非常に低く、自分が何をほしいのかわからず、怒りを抱えた、不誠実な大人になった。完璧主義にも支配されていた。いくら頑張っても結果を出しても安心できなかった。常に生きづらさを感じ、でもその理由はわからず、人間関係に苦労した。いつも孤独感を持つようになった。
だが、そこから這い上がった。長い期間はかかったが、当時苦しんでいた自分とはまったくの別人に生まれ変われたと感じている。かけがえのない友も得たし、親ガチャに外れても、自分の責任で、自分を育てることができると知った。私が人並みよりは多いスキルを持ったり、経験をすることができたのは、両親の経済力や行き過ぎた教育熱のおかげであるのも事実である。そこについては感謝しようと思う。
『お父さん、あなたのことを許します。当時のあなたはとても未熟で、自分の感情を制御できない子どものようでしたね。私は、自分の子どもに心身の暴力をふるうことはありませんでした。激しい感情に振り回されて大変なことは多かったけれど、あなた方を反面教師として、死ぬ気で自分を作り変えようと、今も努力しています。あなた方を親に持たなければ、「親とは」「子育てとは」「幸せとは」と、深く自身に問うこともなかったかもしれません。それから、あなたの教育熱のおかげで、仕事には困らずに生きて行けそうです。ありがとうございました。最後に。私への謝罪の気持ちが本物であれば、どうか、本気で霊性向上に取り組んでください。そして、たまには夢に出てきて姿を見せてくれたらうれしいです』
