台湾で使用されているローマ字表記法について | 台湾華語と台湾語、 ときどき台湾ひとり旅

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台湾で正式に採用されている音標システムは注音符号なので、台湾でのローマ字の扱いは日本での扱いとほぼ同じ。基本的に漢字や注音符号を読めない外国人のために、地名や氏名を表すときに使う。日々使用するわけではないし、学校でそれほど一生懸命教わるわけではないので、はっきり言うとかなり適当である。いろいろな表記法が混在している。

日本もヘボン式とか何式とかいろいろあって決まりはよくわからないのが現状。「しゃしゅしょ」の書き方とか、伸ばす音とか、学校で習う表記法もコロコロ変わる。時代によって人によって「しゃ」を「sha」と書いたり「sya」と書いたり、「加藤」も「Katou」や「Kato」や「Katoh」や「Katō」等、本当に人それぞれ。

台湾でも基本的には同じような状況であるが、台湾ではさらに、統独の(藍と緑の)のせめぎあいがいつでもどこでもあるので、ローマ字表記一つで大モメになってしまう。

大陸の「漢語ピンイン」とはちょっだけと違う、台湾独自の「通用ピンイン」というものが民進党陳水扁時代に混乱の末に採用された。法案に強制力はなかったが、第1次民進党政権時代、首長が民進党員の自治体ではけっこう浸透していた(道路標識や駅名などで使われていた)。が、台北市はちょうど馬英九市長(国民党)だったので政府(民進党)の言うことは無視して漢語ピンインで押し通した。

そして2008年国民党に政権交代すると「通用ピンイン」はすばやく「漢語ピンイン」に変えられてしまった。本当に早かった。

『中文譯音使用原則(2002年版)』で示された「通用ピンイン」の使用ルールが⇓



2009年版では「漢語ピンイン」の使用ルールにごっそり変わった。⇓



現在はどうなのかと言うと、基本的にそのまま。使いたいなら通用ピンインでも漢語ピンインでもどちらでもいい、というスタンスのようである(前述した理由で台北で見かけるローマ字は漢語ピンインが多い)。

ただ台湾でいまだによく使われているローマ字は、上述した「通用ピンイン」でも大陸の「漢語ピンイン」でもなく「ウェード式」である。

例えば高雄の「Kaohsiung」。これが「ウェード式」。そう、漢語ピンイン等との違いはいろいろあるが、一番特徴的なのは、漢語ピンインで「x」、注音符号で「ㄒ」で表す舌面音を、ウェード式では「hs」の2文字を使って表すというところ。台湾の人からもらう名刺のローマ字表記もウェード式が多い。もし例えば名前の中の「孝」の字が「xiao」ではなく「hsiao」と綴られていたら、それはウェード式である。

あとは有気音と無気音に同じローマ字を使い、有気音の方にアポストロフィー(’)を使って区別する、という点もウェード式の特徴。なのでちょっとめんどくさい。「高」と「考」は漢語ピンインだとそれぞれ「gao」と「kao」だが、ウェード式だと「kao」と「k’ao」になる。