台湾華語の「打電話給你」(あなたに電話するよ) | 台湾華語と台湾語、 ときどき台湾ひとり旅

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「我打電話給你(あなたに電話するよ)」。台湾の方や台湾で中国語を勉強した方にすれば「え?なんかおかしい?」というくらいのフツーのノーマルなあたりまえの言い方、そう台湾では。

でも普通話の教科書的には☓。介詞(前置詞)フレーズは基本的に述語(動詞や形容詞)の前に置くというルールに反しているからである。

台湾と大陸でどうしてこんな違いが出たか。一つには、台湾の中国語には「初期現代漢語」の特徴がけっこう残っているから。

「初期現代華語」とは、今使われているような中国語(これを現代漢語と言う)のホントの初期のもの。一般的には五四運動(1919年)前後から1930年代頃までの中国語のことを指す。

この時期、まだ現代漢語は成熟しておらず、文言と白話がせめぎあっていた。ある意味チャレンジの時代でもあり、文法のルールに対してもかなり自由度の高い時期であった。中国でも1920年代、30年代の文学作品には「我打電話給你。」形式の文章は普通に書かれている。例えば、

 婦人滴下淚水在孩子底髮上
(その婦人は子供の髪の上に涙を落とした。)


など。こういった言い方はヨーロッパ言語の影響を受けた「欧化語法」と言われ、30年代にとても流行った。ところが中国大陸の方ではこの「欧化語法」に対する批判が50年代に起こり、介詞(前置詞)フレーズはちゃんと動詞の前に置きましょう。ということになって今に至るのだが、

台湾ではそういう動きは起きず「欧化語法」にも寛容なまま来ているので、今もちゃんと残っているというわけである。

李昂の『帶貞操帶的魔鬼』の中にある次のような文、普通話しか勉強してないとけっこうな違和感。。

我再坐一下,又把waiter叫過來,
畫一張床在紙上
(私はしばらく座っていたがまたウェイターを呼んで、紙の上にベッドの絵を描いた。)

でも「我打電話給你」式表現は台湾では規範中の規範。決して間違いではないので気をつけたい。