家族ぐるみの付き合いをしていても、最後は責任のなすり合い
「なるべくトラブルが起きないように」
と、緑子さんは、謝恩会の詳細の決め事については、その都度、メールでアンケートを取り、全員の許可を得てから実行に移すことに決めていました。
しかし、いざ始めてみると、
返事をしてくれない。締め切りを守らない。
「締め切りを守ってくれないと困ります。締め切りまでに必ず、返信だけはお願いします」
と、メールをすると
「厳しすぎる」と陰口も言われます。
皆に裏切られて始まった謝恩会係だったので、最初から誰の事も当てにしていませんでしたが、皆さん、仕事でもこのようにルーズなのでしょうか?
そうではありません。
これが、仕事のメールや、子供に直接関係する保育園からの重要なメールであれば、誰でもすぐに返信するでしょう。
メールの返信が即、自分の利益になるのであれば、誰だってすぐに返信します。
しかし、
《返信 ≠ 利益》となると、誰も返信なんかしません。
特にこの場合のママ友たちは、こう考えるからです。
《返信 = 積極的
= お手伝いを振られる可能性が高まる
= 緑子さんからの仕返しの恐れ
= でも、断れない ≠ 利益》
だから、
「メールの返信がないと決められないので、必ず返信してください。宜しくお願いします」
と、丁寧にご案内を出したつもりでも、
「もう返信した?」
と、ママ同士の会話から始まり、
「緑子さん、意地になってるよね〜」
「ちょっとあの人、こわい〜」
「反対意見でも言ったら、仕事押し付けられそうだよね〜」
などの陰口が飛び交ってしまうのです。
ご主人も飯山さんからこう言われました。
「ちょっと、奥さん、ピリピリしすぎじゃないですか?これじゃあ、楽しいはずの謝恩会の準備もつまらなくなりますよ。みんな怖いって言ってるし」
これにはさすがに、ご主人もイラッときて、
「みんなって、どなたが言っているんですか?わたしのほうから直接聞いてみますよ」
すると、飯山さんは、
「ほらほら、そういうところですよ。すぐ、感情的になるでしょう?ご主人までそうなっちゃあダメですよ。もっと、こう、ほら、楽しくやりましょうよ」
要するに、緑子さんに貼られた、
「謝恩会係に決まったのに、一人だけゴネてみんなに迷惑をかけた感情的な女」
というレッテルは、なにをどうやっても剥がせないのです。
緑子さんは、比較的、仲の良かったママに相談しました。
どうやったらみんなメールを返信してくれるのだろうかと。
答えは、
「それは無理だと思う。返信してくれる人はしてくれるし、しない人は絶対にしない。だから、そういう人は無視をして勝手に決めてしまうしかないと思う。でも、そうすると、後で文句を言ってくる人が必ず出てくるんだけど、そういうのはママ友の世界での決め事では毎度のことだから、仕方のないことだと思う」
(じゃあ、そうなったとき手伝ってくれる?)
緑子さんは、そのママに、そうお願いすることはできませんでした。
(友達だったらお願いできるけど…)
そう思ったそうです。
友達じゃないのだから、ビジネスライクに仕事を振ればよかったのに…。
わたしなんか、そう思いますが、このときの緑子さんにそういう発想はありません。
「謝恩会が終わる頃にはすべての保護者を嫌いになっている」
あの言葉が何となくわかる気がしてきました。
そのママは、別に無責任なことを行っているわけではありません。
「事実はこうだ」
と、いうことを緑子さんに伝えただけですが、緑子さん自身にも言葉を素直に受け止める気持ちが持てなくなっていたのです。
つまり、徐々に、心が蝕まれていたのです。
しかし、これはまだまだ序の口です。
つづく
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