「子どもの思い出のDVDを作りたい」
緑子さんのご主人の知り合いに映像関係の仕事をしている友人がいたので、その方の好意でつくっていただくことになりました。
もちろん、経費はかけられないので、ギャラはなしです。
子どもの成長を追った映像というのがテーマだったので、赤ちゃんの頃から現在までの写真を各家族から20枚提出してもらうことに話し合いで決まりました。
準備期間も含めて、お願いから三ヶ月ありましたが、締め切りを守らない家族がほとんどでした。
「友人の好意でつくっていただくので、締め切りを守ってください。締め切りに間に
合わなければ、この話はなくなりますので、必ずお願います」
そう、メールを送ると、
「写真を20枚だけなんて選べないので、そちらで選んでください」
と、200枚も送信してきた家族。
「好意でやってくださるのなら、期日も待ってくださるのが筋でしょう。最悪、いつまでだったら大丈夫ですか?」
などと、返事をしてくる家族もいます。
紆余曲折を経て、最終的には思い出あふれるいいDVDに仕上がりましたが、最終チェックの段階でエンドロールのクレジットにクレームがついたのです。
例の飯山さんです。
エンドロールでは、子供達の映像に音楽を合わせ、子供達の一人一人の名前に、新たに撮影した部分や編集に協力してくださった方の名前を入れていました。
「ついにDVDが完成いたしました。みなさまのご協力のおかげです。ありがとうございました。DVDは謝恩会当日に上映後、ひと家族に1枚ずつお持ち帰りいただきます」
そうメールを送ると、すぐに飯山さんから返事がきました。
「チェックをさせてください」
製作途中で、チェックをしていただく方は何人かにお願いしていました。
その方々のチェックをすべて通り、完成という段階になって、飯山さんは、初めて
「チェックしたい」
と言ってきたのです。
そして、DVDを渡し、すぐに帰ってきた返事が、
「エンドロールに名前が載っている人と載ってない人がいるのは不公平だと思う。これを見て不愉快に思う家族がいたらどうするんですか?写真は全員の家族が提出したんだから全員の名前を載せてください」
と、いうのです。
エンドロールです。
カメラが誰とか、編集が誰とか。
DVD製作に携わってくださった方の名前をエンドロールに入れている。
当たり前のことだと思うのですが…。
とりあえず、名前を載せてない方全員に聞いてみました。
「手伝ってないんだから、名前が載らないのは当たり前ですよね。て、いうか、そんなの気にします?」
みなさん同じ意見です。
その意見を飯山さんに伝えると、
「それは、緑子さんが怖いから、本音を言えないんですよ。クレジットは全員の名前を載せるか、そうじゃなければ無くしてください。それが、常識でしょう。嫌な気持ちがする人が一人でもいたら、それはやっちゃあダメでしょう」
いかにも、もっともらしいことを言っているように聞こえますが、彼の論点は、どんな話でも、常に、
「緑子さんが怖いから、本音を言えない」
というところに持っていこうとするのです。
結局、DVDを製作してくださる友人の都合もあり、エンドロールの変更はしませんでしたが、その後、彼が、その件を持ち出すことは一度もありませんでした。
彼の真意がなんなのか、緑子さんにもご主人にもまったくわかりませんでした。
ちなみに飯山さんの名前はエンドロールに入っています。
ただ、この時点で言えることは、
とにかくクレームを言って困らせたかったのか?
どんな形であれ、自分の影響力を誇示してみせたかったのか?
謝恩会当日、余興の中で、
「15人のパパたちが、歌って踊るパフォーマス」をしようという企画も同時に進行していました。
これも、話し合いで決まったことでした。
曲を決め、コーラスで歌って、おもしろおかしく踊って子供達を喜ばせる。
パパたちは、半年に1回集まって飲み会を開いていたので、謝恩会までは、1ヶ月に1回集まってカラオケボックスで練習をしよう。
そう決まりました。
緑子さんのご主人が、歌う曲がコーラスになっている楽譜を取り寄せ、ママの一人にピアノで各パートを弾いてもらい、それをテープに録音して、練習初日にパパ全員に楽譜とテープを渡し、カラオケボックスでその曲を流しながら練習をする。
そういうことになっていたのです。
当日の全員が集まる直前、緑子さんのご主人の携帯に飯山さんからの着信です。
電話を取ると、飯山さんは、こう言ったのです。
「実はですね。今日までに僕がお父さんみんなに聞いたんですよ。本当にこんなことやりたいのかって?そしたら、みんなやりたくないって言うんですよ。だから、やめにしません?まあ、詳細は、集まったときに言いますけど、みんなご主人や緑子さんのやり方にはついて行けないって言ってますよ。みんなが言えないから、僕がこうやって嫌われ役となってかけたんですけど、ちょっと、考えておいてください」
「なんで、今さらそんなことを言い出すんですか?楽譜も取り寄せたし、ママにも協力してもらってテープに録音してもらったんですよ。やりたくないならやりたくないって言う時間はいくらでもあったでしょう?」
「いや〜。みんなシャイだから言えないんですよ。とにかく、詳細はあとで」
そう言って、一方的に電話は切られました。
緑子さんのご主人の怒りは、ついに頂点へ。
そして、そのあと、カラオケボックスでは、流血の事態に……。
つづく
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