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では、パワハラシリーズの続きです。
怪メール
『記者Kの告発 編集者・岡太郎の悪事をここに告発する!こんな社員はクビにしろ!』
そのようなタイトルだったと記憶しています。
若い編集者は、わたしにそのままPC画面を見せてくれました。
実際には、そのメールにはわたしの名前は入っていませんでした。「記者K」とあるのです。しかし、読む人が読めば、それがわたしであることは一目瞭然でした。
そこには、岡太郎が、いかに編集者という立場を利用して、悪事を働いているかが箇条書きで書かれていました。
「経理をごまかして会社の金を横領している」
「会社の近くに愛人を住まわせて、そこで油を売っている」
などなど、
詐欺太郎がわたしに話した事柄に始まり、
「岡太郎は格闘家の取材では敵前逃亡した」
「岡太郎はいまの編集部に不満を持っており、仕事をする気がしないと公言している」
などなど、わたしが、実際に詐欺太郎に話してしまった内容まで。
さらに、
「このような不逞(ふてい)な輩を野放しにしてはならない。彼の悪事を会社は糾弾(きゅうだん)しろ!これは、全記者、カメラマンの総意である!」
と、いった言葉で締めくくった、かなり過激な内容だったのです。
しかも、その文面が、普段のわたしの語り口調を真似たものでした。
だから、朝、会社に来て、パソコンを開いてメールをチェックした若い編集者は、怪メールを見るなり、岡太郎に伝える前にわたしに電話で教えてくれたのでした。
「これ、ほんとうに風さんが書いたんじゃないんですか?」
「おれじゃない。だって、これ、社員の社内ランで繋がれているパソコンから送られたものでしょう?おれパスワードなんが知らないし、勝手に使いたくても使えないよ」
「じゃあ、この内容は嘘なんですか?」
「全部が全部、おれが言ったことじゃないけど、半分はおれが言ったことだね」
「どういうことですか?」
わたしは、若い編集者にすべてを話しました。わたしが知っている事実をです。反応はやはり、
「いくらなんでも、詐欺太郎さんが風さんと岡太郎さんを貶(おとし)めるためにこんなことしますかね〜」
事実が、目の前にあるのに、それでも半信半疑なのです。もちろん、彼も、自分の先輩がこんなことをして、自分の先輩がこんなことをされているとは思いたくないからです。
事実が、目の前にあるのに、誰かわからない第3者がやったと思い込みたい。それが一番、自分にとって安心だから。
「じゃあ、他に誰がこれを書いたって言うの?おれじゃなかったら詐欺太郎か、上司しかいないよ」
「なんでこんなことするんですか?やったことがすぐにバレるのに」
「なんでこんなことするかなんて、おれはわからない。こういうことをやる人間の気持ちなんてわからないよ。わかりたくもない。でも、バレたところで、会社は詐欺太郎を追求したりしないよ。会社はこの問題が表沙汰になるほうが怖いからね。社員がいくら騒いでも会社は放置だよ。会社は、『そんな事案は把握していない』。最後までそれで通すよ、きっと」
「いくらなんでも、それはないんじゃないですか?これ問題にしないとまずいでしょう?」
「いや、絶対に詐欺太郎はなにも問われない。彼自身が、そのことを一番よく知っているから、こういうことを平気でできるんだよ」
「風さん、どうするんですか?」
「岡太郎に謝るよ。すべてを話す。許してくれないだろうけど、仕方がない。自分で蒔いた種だ。責任とって辞めろと言われたら辞めるよ」
「詐欺太郎にも言うんですか?」
「いや、なにも言わない。言ったところでなにかが解決するわけじゃない。こんな人間と同じ土俵に立ったらダメだ。そのことがよーくわかった」
金持ち喧嘩せず
まず最初に、喫茶店での話に一緒にいた上司に電話をかけました。上司は、もちろんその事情を知らず、メールを確認後、すぐにわたしに電話をくれました。
「これはどういうこと?」
「じゃあ、◯◯さんも知らないんですね」
「知らなかった。これは、明らかに詐欺太郎の仕業だろう。でも、なんでおれを巻き込んでまでこんなことするんだ?」
わたしは、詐欺太郎がやっていたピンハネの話をしました。おそらく、わたしに対する仕返しであること。わたしを貶(おとし)めると同時に、嫌いな岡太郎も一緒に貶めてやろうと企んだ筋書きであろうということ。
「じゃあ、おれはただ利用されただけか?あいつ(詐欺太郎)おれを舐めてるな〜」
「どうしますか?編集長と相談しますか?」
わたしの問いに対するその上司の答えはこうでした。
「言わないよ。向こうから聞かれたら仕方ないけど、おれもこれ以上巻き込まれたくないからな。おれは、この件に関しては関わってないことにしてくれよ。風くん、頼むよ。これはもうお互い他言無用ということにしておこう。詐欺太郎は怖いな〜。こういうやつは見境なくなるからな。お互いなるべく関わらないようにしよう」
まあ、想像していたとおりの答えでした。
残念だとは思いながらも、これは、社員がフリーを貶(おとし)めようとしていることです。それに、上司と岡太郎が利用されているだけ。そんなくだらない話に上司だって巻き込まれたくありません。
わたしは、自分の弱い立場をひしひしと実感したのと同時に、次の言葉が頭に浮かびました。
金持ち喧嘩せず。
電話を切ったあと、わたしはすぐに岡太郎に電話をしました。すると、開口一番、岡太郎はこう言います。
「あ、風。今朝パソコン開いたら変なメール見たんだけど、あれ、なんだろう?君も見た?誰があんなこと書いたんだろうね」
別に動揺しているわけでもなく、怒っているわけでもありません。淡々とした口調です。わたしは、
「すみません。あのメールは俺が書いたものではありません」
「そんなのわかってるよ。だから、誰が君になりすまして書いたんだろうなって。だって、中身そうとうリアルだよ」
彼は、全然わたしを疑っていません。むしろ、疑って欲しかった。心が痛みました。
「でも、俺が詐欺太郎に話した内容です。だから、俺の責任です。ほんとうにすみません」
「え?そうなの?どういうこと?」
わたしは岡太郎に会い、事の経緯をすべて話しました。そして、
◯怪メールに関して、岡太郎が会社から説明を求められたら、わたしも動行するということ。
◯詐欺太郎の口車に乗って、岡太郎の悪口を上司の前で口走ったこと。
◯これに関して、あらゆる罰を受け入れること。
を、伝えました。その上で、
◯ただ、彼らに話した、わたしが岡太郎に対して感じていたことは、すべて事実であり、わたしの本心である。わたしは、今のような岡太郎とは仕事をしたくない。
と、いう気持ちも正直に話しました。何一つ包み隠さず、すべての思いを伝えました。
もちろん、今更遅いのです。そうなる前にきちんと伝えるべきだったのです。で、なければ、わたしの胸に閉まっておくべきことでした。岡太郎は話のわかる相手でした。数少ない貴重なビジネスパートナーだったのに、わたしが裏切ったからこうなってしまったのです。
なにもかも自業自得です。
岡太郎は、
「それにしてもさ〜。詐欺太郎怖えな〜。まあ、怪メールは信じる人は信じるだろうし、信じない人は信じないだろうから別に気にしなくていいんじゃない。詐欺太郎怖いよ。俺ももう関わりたくないよ」
「すみません…」
「てか、きみ、俺にそんなこと思ってたんだ。ひどいな〜。だったら直接言ってくれよ」
「すみません。でも、直接言っても、俺のいうことなんか、絶対聞いてくれませんよね」
「たぶんね。こんな汚い真似するやつの言うことなんか聞くかよ!(笑)」
「おっしゃるとおりです。僕は最低です。すべて受け入れます」
「まあいいよ。もう、こんな気持ち悪い話さっさと忘れたいからさ〜。おわりおわり」
岡太郎も、金持ち喧嘩せず か〜。
それ以来、岡太郎は、この件については、一度も触れることはありませんでした…。
とは、いきませんでした。
現実は、もっと、格好の悪いもんです。
メールを見たありとあらゆる人から問い合わせが来ました。わたしは、上司がその場にいたことだけは伏せて事実だけを伝えました。詐欺太郎の悪事についても言いません。
これ以上、この話を広めるても、誰一人良い思いをしないからです。
岡太郎のもとにも問い合わせは来ます。その度に彼は、わたしに対する仕返しとばかりに、
「風のやつ、おれから詐欺太郎に乗り換えようとして日和ったんだけど、あいつからも嵌(は)められちゃってさ〜」
と、編集部中に聞こえるように大声で話すのです(もちろん詐欺太郎が編集部にいないときを見計らってですが)。その都度、周りから笑いが起こります。周囲にとっても、わたしにとっても、その笑いが救いとなりました。そう言ってもらうことで、わたしは救われたのです。
もちろん、格好の悪いことをしでかしたわたしには、
◯日和見主義
◯簡単にチクるチクリ屋
◯信用できない奴
と、いうレッテルが貼られました。
でも、ハブられるのではなくて、そう言われて、いじってもらえるだけ良かったのかもしれません。
そして、わたし自身にも、いじってもらえる空気感といったものが年齢とともに備わったというか、余裕が若い頃に比べて全然あるというか。
とにかく、それだけで済んで、わたしは救われました。
あとは、時間が解決してくれます。
人の噂も75日です・・・・。
一方、詐欺太郎は、何も変わりません。誰も、彼にはこの件については何も言いません。問い合わせることもありません。
「詐欺太郎はなにをしでかすかわからない。とにかく、怒らせないほうがいい」
そういう雰囲気だけは、編集記者カメラ違わず共通認識となりました。
憎まれっ子は世にはばかるのです。
つづく

