「Windows 10」搭載 PC を使用していると、起動速度やデータ転送速度の低下といった パフォーマンスの問題が発生することがある。Windows 10 が遅くなる 5 つの原因と、そ の解決策を説明する

 

「Windows 10」がぎりぎり動く“最低PC”スペックは本当に低かった

Microsoft のクライアント OS「Windows 10」は、動作の安定性で定評がある。それでも他 のクライアント OS と同様に、エンドユーザーは Windows 10 搭載 PC について、処理速度な どのパフォーマンスに不満を抱えることがある。特にスペックが不足気味の PC については、IT 管理者は概してパフォーマンス問題への対処を強いられる。

 

■ さすがに低過ぎ? 「Windows 10」が動く最低PCスペックはこれだ

 PC のスペックが十分かどうかを判断するためには、IT 管理者はまず、Microsoft が提示して いる Windows 10 のシステム要件を確認するとよい。具体的なシステム要件は以下の通りだ。

  ・ プロセッサまたは SoC(プロセッサなどシステムの構成要素を 1 つのシリコンチップに集約し た製品)

  ・動作周波数(クロック周波数)1GHz ・メモリ

  ・Windows 10 が 32bit 版の場合は容量 1GB、64bit 版の場合は 2GB ・ストレージ 

 ・Windows 10 が 32bit 版の場合は空き容量 16GB、64bit 版の場合は 20GB ・ビデオカード

  ・「 Windows Display Driver Model」(WDDM)バージョン 1.0 以降のドライバを搭載、グ ラフィックス処理技術群「DirectX」バージョン 9 以降に準拠 ・ディスプレイ 

 ・解像度 800×600 ピクセル  上記の条件をぴったり満たした PC で、Windows 10 を動作させることは可能だ。ただし、そ の使用感にエンドユーザーがそれほど長く耐えることはできない

 

Windows 10が快適に動く“本当の最低PC”スペックはこれだ

 

PC がクライアント OS「Windows 10」を動作させるには、Microsoft が公開しているシステ ム要件を満たせばよい。ただし動作することと、快適に利用できることは別だ。現実的には、 Windows 10 搭載 PC には以下のスペックが必要になると考えられる。 

■ 公式の倍どころじゃない? Windows 10“真のシステム要件”はこれ 

・ プロセッサまたは SoC(プロセッサなどシステムの構成要素を 1 つのシリコンチップに集約し た製品) 

 ・動作周波数(クロック周波数)1.8GHz ・ メモリ  

・Windows 10 が 32bit 版の場合は容量 4GB、64bit 版の場合は 8GB 

・ ストレージ  

・容量 256GB、ストレージインタフェース規格「SATA Revision 3.x」に準拠 より快適に使いたい場合は、形状規格「M.2」およびストレージインタフェース規格「NVM Express」(NVMe)に準拠したストレージを選択する。

 ・ ビデオカード ・グラフィックス処理技術群「DirectX」バージョン 12 以降に準拠 DirectX 9 の登場は 2002 年にさかのぼる。現在使われているほとんどの PC ではまず見か けない。DirectX 12 でも登場は 2015 年にさかのぼるものの、基本機能は DirectX 9 と比 べてはるかに優れている。

 ・ディスプレイ ・解像度 1920×1080 ピクセル Windows 10 のシステム要件である 800×600 ピクセルのディスプレイは、2005 年ごろ以 降の PC ではまず見かけない。2015 年までには 1366×768 ピクセル前後のディスプレイ (HD ディスプレイ)が標準となった。現代のエンドユーザーの生産性を保つためには、最低 でも 1920×1080 ピクセル前後のディスプレイ(フル HD ディスプレイ)が必要だ

 

Windows 10の社用PCが“このスペック”以下なら仕事にならない

Microsoft は「Windows 10」のシステム要件を公開している。システム要件を満たす PC で あれば、Windows 10 を動作させることは可能だ。ただしシステム要件をわずかに上回る程度の PC では、エンドユーザーは快適に利用できず、生産性にも影響しかねない。特に会社支給の PC など、ビジネスで利用する PC であれば、エンドユーザーがストレスを感じずに利用できるだけの スペックが必要だ。

 ■ このスペック以下のPCは仕事にならない? 

ビジネス用の Windows 10 搭載 PC は、以下のスペックを満たすことが望ましい。 

・ OS  ・64bit 版の Windows 10 

・ CPU  ・Intel「Intel Core i5」シリーズまたは「Intel Core i7」シリーズの 4 コア以上搭載モデル 

・ メモリ  ・容量 8GB 以上   より快適に使いたい場合は、容量 16GB 以上になるようにメモリモジュールを増設する。 

・ ストレージ  ・容量 256GB 以上 より快適に使いたい場合は、形状規格「M.2」およびストレージインタフェース規格「NVM Express」(NVMe)に準拠し、レーン(データ伝送路)の使用数 3 本(x3)以上のスト レージを選択する。

  古いPCでWindows 10を快適に動作させるためには、メモリモジュールの増設によって8GB または 16GB 程度のメモリ容量を確保し、起動ドライブをストレージインタフェース規格「SATA Revision 3.x」の SSD にアップグレードするとよい。

そうしたアップグレードのコストは 300ド ル以下で済むこともある。メモリと SSD のコスト比率は、50 対 50 から 70 対 30 の間が目安だ。

  処理速度といった PC のパフォーマンスを最大限に引き出すためには、Windows 10 を常に最 新の状態に保ち、余分なファイルがない状態にすることが望ましい。IT 管理者が常にドライバや アプリケーションを更新しておけば、Windows 10 搭載 PC は総じて快適に動作する

 

 

Windows 10「起動が遅過ぎ」問題が “ハイスペPC”でも発生するのはなぜ

 PCを使用していると、処理速度などのパフォーマンスに関する問題が発生することがある。PC のスペック不足を解決し、欠落している更新プログラムをインストールすれば、パフォーマンスに 関する一般的な問題は解消できる。ただし、それだけでは問題が解決しない場合もある。

 クライアント OS として Microsoft の「Windows 10」を搭載する PC では、パフォーマンス に影響を及ぼし得る要因が幾つかある。パフォーマンスに関する主要な 5 つの問題について、そ れらの要因と対処法を解説する。

 

1.起動が遅い 

エンドユーザーにとって大きな問題が、PC および OS の起動の遅さだ。一般的には、メモリ モジュールを増設したり、起動ドライブをよりデータ読み書きの高速なストレージに変更したりす ることで、起動速度の改善が見込める。それでも起動に 90 秒以上もかかる場合、起動時に重大 な問題が発生している可能性がある。

  主な問題は 2 つある。

 1 つ目はデバイスの問題だ。PC の中に使用していないデバイスがある場 合、「BIOS」(Basic Input/Output System)などの起動制御ファームウェアの設定で、こうし たデバイスを無効にするとよい。有効なデバイスを少なくすれば、PC がデバイスを利用可能にす るためにかかる時間が短くなり、起動が早くなる。

  2 つ目はスタートアップ(OS 起動時のプログラム自動実行機能)の問題だ。IT 管理者はシス テム監視ツール「タスクマネージャー」(Task Manager)の「スタートアップ」(Startup)タブ を開くと、スタートアップの対象になっているプログラムを簡単にチェックできる。

 

2.CPU使用率が高い 

 Windows 10 のシステム監視ツール「タスクマネージャー」(Task Manager)は、「詳細」 (Details)タブの「CPU」欄で、プロセス(「Windows」におけるプログラムの実行単位)ご との CPU 使用率を表示する。例えば CPU 欄の数値が「50」(CPU 使用率 50%)以上の項目 はチェックする価値があり、「80」(CPU 使用率 80%)以上の場合はほとんどの状況で注意を要 する。 バックアップをはじめとする、CPU やディスクの集中動作を伴う作業でも、通常は CPU にそ れほどの負荷はかからない。起動ドライブやシステムドライブのバックアップ時でも、1 個のプロ セスで CPU 使用率が 15%を超えることはめったにない

 CPU 使用率が高いプロセスへの対処は、困難が伴うことがある。通常は IT 管理者が一般的 な保守作業を一通り実行し、考えられる原因を排除する。主な保守作業は以下の通りだ。

  ・ PC を再起動し、必要なアプリケーションのみを開く 

 ・「 Chrome」「Firefox」「Edge」といった、複数の Web サイトを同時に開くタブ形式の Web ブラウザは、複数のプロセスを発生させやすい。Web ブラウザ関連のプロセスだけで、10 個以上のプロセスが動作していることは珍しくない。必要最小限の Webブラウザのみを開 くようにするとよい。

  ・ Windows 10 の更新プログラムが全て適用されているかどうか、アプリケーションも同様に最 新の状態になっているかどうかを確認する。デバイスドライバも同様に対処する

  ・ ローカルドライブ、特に起動ドライブやシステムドライブに対して Windows 10 の「ドライブ の最適化」を実行する

 ・ ドライブの最適化は、ドライブの「断片化」(ファイルを構成するデータの分散化)を解消し、 PC の動作の安定性と速度の向上を支援する機能だ

 

Windows 10「なぜかネットが遅い」問題は“あれ”が原因だった

 

3.ネットワーク接続が遅い 

 データ転送速度の低下といったネットワークのパフォーマンス問題は、概して有線 LAN や無線 LAN といったネットワークインフラにおける、集中的な通信の発生が原因だ。こうしたネットワー クインフラの問題に対して、PC レベルで対処できることはあまりない。

 Windows 10 搭載 PC では、ネットワークインフラに問題がないにもかかわらず、ネットワー クのパフォーマンス問題が生じることがある。その場合、まずは NIC(ネットワークインタフェー スカード)のドライバをチェックするとよい。

 NIC のドライバの情報は、Windows 10 のデバイス管理ツール「デバイスマネージャー」 (Device Manager)で確認可能だ。デバイスマネージャーの「ネットワークアダプター」(Network adapters)の項目を開くと、NIC の一覧が現れる。NIC の名称をダブルクリックすると、その NIC のプロパティ画面が開く。プロパティ画面の「ドライバー」(Driver)タブを開くと、名称や バージョンといったドライバの情報が確認できる。

 

 利用中のバージョンのドライバに関して、他のエンドユーザーもトラブルを抱えている場合、イ ンターネットで同様の問題に関する報告が見つかる可能性がある。

「新しいドライバに更新すると パフォーマンス問題が解決するのかどうか」「ドライバを元のバージョンに戻すとパフォーマンス問 題が解決するのか、むしろパフォーマンスが悪化するのか」を判断する際の参考になる。

 Windows 10 搭載 PC ではほとんどの場合、NIC のドライバを最新のバージョンに更新する か、過去のバージョンに戻すかのいずれかの手段で、ネットワークのパフォーマンス問題は解決で きる。

 

Windows 10「妙にHDDやSSDが遅い」は“あの大問題”の兆候だった?

 

■ 4.HDDやSSDのデータ読み書きが遅い 

 Windows 10 搭載 PC で発生するパフォーマンス問題の中で、潜在的な不安が最も大きいの は、HDD や SSD といったドライブのデータ読み込みや書き込みの遅さだ。読み書き速度の遅さ は、ドライブ内にあるディスクの故障の兆候である可能性がある。

  読み書き速度が遅くなった場合に、まずすべきなのは、直ちにドライブ内の全データのバック アップを取得することだ。バックアップを取っておかないと、ディスクが故障した際にデータを読み 取れなくなりかねない。 ドライブのトラブルの兆候を探るための手段は豊富にある。

 ドライブの診断には、各ドライブが内 蔵する自己診断機能「S.M.A.R.T.」(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology) が利用できる。S.M.A.R.T. を利用したドライブ診断ツールには有料のものに加えて、オープンソー スソフトウェア(OSS)の「CrystalDiskInfo」(Standard Edition)といった無料で使えるものも ある。

 

 

Windows 10「HDDやSSDがなぜか遅い」は“あれ”が原因だった?

 

5.HDDやSSDに異常がないのに、なぜかデータ読み書きが遅い 

 Windows 10 搭載 PC でデータの読み込みや書き込みが遅くなった場合、まずは HDD や SSD といったドライブの自己診 断 機 能「S.M.A.R.T.」(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)を使って、ドライブの診断を実行するのが基本的な対処法だ。それで も明確な問題が判明しない場合、故障といったドライブの物理的な問題ではなく、ドライブ内に 発生した過剰なごみやデータの断片化が原因となっている可能性がある。

  IT 管理者はドライブ内のごみをなくし、断片化を解消するために、以下に示す 4 つのツールや 手段を利用できる。

 1.ディスククリーンアップ ・ 管理者権限でコマンドラインインタフェース(CLI)の「コマンドプロンプト」(Command Prompt)または「PowerShell」を開き、ドライブから不要なデータを一掃するコマンド 「cleanmgr」を実行する。

 2.ドライブの最適化 ・ 起動ドライブ/システムドライブ(通常は Cドライブ)および速度が遅いドライブに対して、「ド ライブの最適化」を実行する。ドライブの最適化は、ドライブの「断片化」(ファイルを構成す るデータの分散化)を解消し、PC の動作の安定性と速度の向上を支援する機能だ。

 3.DISM ・ コマンドプロンプトまたは PowerShell で、破損したシステムファイルをスキャンして修復する 「DISM」(展開イメージのサービスと管理)を実行する。

 4.RAPR ・ ソースコード共有サービス「GitHub」で、オープンソースのドライバ管理ツール「Driver Store Explorer」(RAPR)を入手する。ダウンロードしたファイルを解凍し、「RAPR.exe」ファイ ルを管理者権限で実行する。「Select Old Drivers」(古いドライバーのみ選択)ボ タンをクリックすると、古いドライバ全てにフラグが付く。「Delete Driver」(ドライバーを削 除)ボタンをクリックすると、現在使われていないドライバを全て削除する

 ディスククリーンアップを実行すると、過去の Windows アップグレード時に発生した一時ファ イルがドライブに残っている場合、25GB ~ 30GB のデータを削除できることがある。ドライブ の最適化はドライブ内のデータを削除しないものの、データの保存構造を整理してデータの読み 書き速度を改善する。

 DISM を実行すると、孤立したシステムファイルを「WinSxS」フォルダから削除できる。 WinSxS フォルダは、Windows のカスタマイズと更新に必要な機能をまとめた「Windows コ ンポーネントストア」のファイルを格納するフォルダだ。RAPR は、古くなって使われなくなった ドライバを削除できる。

  上記を合わせて実行すると、起動ドライブ/システムドライブで 50GB 以上のドライブ容量を 確保できることがある。これによって全般的なデータ読み書き速度だけではなく、更新プログラム の適用やアップグレードの高速化が見込める

 

最後に、パソコン高速化・最適化できるPCメンテナンスソフトといえば、Windowsの純正無料メンテツール「PC Manager」を紹介してみます。

 Windowsを長期間利用していると、さまざまなジャンクファイルが蓄積され、動作速度に影響を与えたり、ストレージの容量を圧迫するようになります

ダウンロード:https://pcmanager.microsoft.com/ Antivirus, Cleanup PC, protection for your computer | Microsoft PC Manager

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「PC Manager」は、2022年11月現在、パブリックベータ版として無料公開されています。まだ日本語化はされていませんが、少し前までは中国語版のみだったところ英語版が追加されたことで、利用のハードルはぐんと低くなりました。  ホームページからプログラムをダウンロードし、インストールを終えて起動すると、Windowsのデスクトップ画面の右下、タスクバーコーナー付近に、メニューが並ぶホーム画面が表示されますので、その中から必要な機能を選んで実行します。全ツールを順番に実行するウィザードのようなものはなく、個別に実行する仕組みです。