デルフォイの記憶



私はデルフォイから遠くへ行ったことがない。
だから、世界がどんなふうになっているのか知らなかった。
確かに、デルフォイには各都市の人が往来していたし
各都市の将軍や商人などさまざまな人と話していて
情報としては受け取ってはいた。
でも、体験がないから各都市の話は絵空事のままで終わってしまっていた。

しかし、過去世の彼が話す異国の風を感じる話は私をその世界に引き込み
生き生きとそこに立たせてくれた。

彼はある時言った


もっと北にいくと
雪という白くて冷たいものが空から降ってくるんだよ
 
そう教えてくれた。
私は雪を見たことがなかったが、彼の話す雪の物語は
私の中で色を得て広がっていった。

雪は触れるの?
と聞いてみると
とても冷たいけど触れるよという彼
あらゆるところを白一色に変える雪の壮大さに私はうっとりとした。
そんな私を彼は穏やかに見つめていた。


さらに北にいくと
髪の毛は金色で
瞳が青い人がいると彼は言う

黄金の髪色?
本当に?
私は自分の黒い髪の毛を見ながら言う
きっととても美しいのでしょうね

彼はいろんな話を神託の合間に私にしてくれた
私はその度、心躍らせ 
その世界に思い馳せた
彼は喜ぶ私を見たかったのだろう
私の知らないことをいつも話してくれた

今思えば、純粋な愛の循環
彼は与える喜び
私は受け取る喜び

彼は私を支え
私は神託を受ける


デルフォイの頃は年の若く
幼かったが
幼い故の純粋さが返って良かった。

私はいつも言ってた
デルフォイしか知らないから何も知らない
でも、彼は
神の言葉を受け取ることができるのだからそれでいい
他の都市のことは知らなくても誰よりも神のことをしってるのだからそれでいい



そんな記憶
遠い記憶