今日から奈央は第5ホームのスタッフとして働くことになった。緊張し、昨日はあの津村の“他のホームに行っても一緒よ。”と言う言葉も心のどこかに引っ掛かり眠れなくなったのだ。
奈央は考えないように、まっさらな気持ちでホームのベルを押した。
そのホームはデイサービスはなく、一階からなんと四階まで、居室になっていた。比較的段差はなく、きれいなホームだっいた。
奈央は、スタッフに案内され、事務所に向かった。奈央のいた、開かずの間とは違ってホーム長のいる事務所は三階の居室の一角にあった。
奈央は事務所のドアを開けてホーム長の越田に挨拶をした。
「あら。よく来てくれたわね。まあまあそこの空いてる席に座りなさい。」とチャキチャキとした感じで、話しをしてくれた。奈央は、いい人だな。愛想もない室井とはぜんぜん違うな。と内心ホッとした。
そらから、奈央の勤務階となる四階に案内してもらった。
「リーダーの福島さん。これからいろいろと教えてもらってね。若いから大丈夫よ。」と紹介をしてもらった。
リーダーの福島は、65才の女性。越田にそう言われ、分かりました。と愛想よく返事をしていたが、他のスタッフには「また越田さん、新人さんをあたしたちリーダーに押し付けて、こっちだって、人手不足で教えるのも大変よ。全く。」などと、ぼやいているのを、偶然聞いてしまった。
奈央は嫌な予感を覚えた。
奈央の階は比較的介護度が、他の階に比べて重いと、越田から言われた。車椅子の人が一人と、杖を着いた入居者が、二人居て、あとは、独歩での方がほとんどの9名。
フロアに、車椅子が3人、寝たきりの入居者が一人いたホームから来た奈央には介護度はまだ低いのでは?と生意気にも思ってしまった。
福島の言葉にはなんだかトゲがあるな。と感じた奈央は不安なままスタッフの紹介を受けた。