不完全な切り紙細工 -53ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 目が覚めて朝の生温かい光のなかで

 深く息を吸う

 肺の奥底まで空気が届き

 そこからまた吐き出す感覚

 息を身体のなかで感じる不思議

 生きてあること

 死んではいないと確かに感じる密やかな悦び

 もうしばらく

 この柔らかな充足感の底で

 自分を感じ取っていようと思った

 このいのち

 他ならぬこの自分の

 呼吸