不完全な切り紙細工 -50ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 ミットレレ橋の上で

 彫刻みたいな顔をして

 川を眺めていた少年の後ろから

 通りかかった同い年くらいの少女が言った

 「さようなら」


 少年は振り向いて「なぜ」と聞く

 なぜわかったの

 明日にはここを出て二度と戻ってくることはない

 そう思っていたからだ

 「だって顔に書いてある

  さようなら」


 でもそのさようならは あうふ・ゔぃだぜーん

 ちょっと大人っぽく「また 会いましょう」


 少年は少女を見返して

 「そうだね またいつか」と言ってみた

 眩しい金髪を揺らした少女はまっすぐに

 「いいのよ 戻ってくることはない

  私もそのうち街を出ていくわ

  そうやってみんな大人になるんだわ」



 ラインは今も流れているだろう

 あのときのラインと何一つ変わらずに