あるカイツブリの一家に起きた出来事(1)・七月の水辺へ(3) | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 水辺にはもちろんたくさんの生き物が集まってくるし棲んでもいる

 そのなかでも小さなサイズの鳥というと
 カイツブリがそうだろう
 見た目が鴨に似ているので時々
 鴨の子どもだと思われてしまう
 
 小さいけれど
 その水掻きのついた足は身体の後半部に付いていて
 かなりの速度で水を掻く
 イメージとしてはこんなだ(以前のスケッチ

 そしてカイツブリたちの鳴き声はなかなか
 綺麗な声なのだ
 ぴぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅ
 と
 きるうううううううう
 が混じったような音(わかる?)で長く尾を引いて鳴く
 でもカイツブリは尾がとても短い(ん?)

 その鳴き声はかなり遠くからでもわかる

 よく通る声 

 水面の上を過ぎ渡る伝令の声みたいだと思う

 ぴぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅぴぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅ
 (きるううううううううきるうううううううう)

 それはともかく
 カイツブリは水をその足で掻き分けて進むので
 波紋を作り出す名人でもあるようだ

 



 下の写真など

 もうほとんど幾何学的な同心円





 いろんなときに波紋を作り出すのだけれど

 それは実は水を掻くときだけに限らない

 飛び上がるのではないのに

 水の上に浮き上がって羽を広げる





 かと思うと

 こんなことも





 あんなことも





 まあ

 そういうわけでカイツブリは水紋・波紋メーカーとしては

 なかなか多彩でしかも一流なのだ


 この日

 夏

 だからカイツブリの夫婦には子どもが二羽

 初夏くらいに生まれたのだろうか

 保護色なのか縞々模様があって

 猪の子どもみたいで

 まさに嘴がまだ黄色い連中だ





 どこに行くにもお母さんにくっついて行く




 余りお母さんから離れて遠くには行かないようだ

 よちよち泳ぎするくらいなのだろう




 母子の仲良さそうな光景を見るともなく見ていたのだが

 空を鷺が飛んで行ったので

 しばらく目を離して鷺を見送った


 そう言えばカイツブリは番(つがい)で暮らしているのではないのかと

 確か雌雄で交代に子どもを育てる鳥だと思ったが

 父親は何処なのだろう

 と思って見回すと少し離れたところにもう一羽

 ああ きっとあれがお父さんだろうなと

 ファインダーを覗いて

 え? ええ?

 何これ?

 足が三本ある!

 もしかしてこの一家の父親は奇形なのだろうか

 それにしても足が三本とは・・・





 ね

 水の中に足らしきものが確かに三本見える

 ほら

 下の写真でもっとはっきりする





 あれれ

 足だけじゃなくて

 このカイツブリには頭までもう一つある?

 なんだか羽の下に嘴みたいなものが確かに見えるじゃないか

 あれ

 子どもが一羽あっちから泳いでやってきて

 お父さんの向こう側にくっついて

 それから何だかモゴモゴ

 そうしたら

 別の子どもが羽の下からこっち側に押し出されそうになったぞ





 いやあ

 とんでもない早とちりをしてしまったようだ

 これ

 三本足のお父さんじゃなくて

 さっきまで一緒にいたお母さんだったらしい

 そして一方の子どもがお母さんの身体の上に乗っかっている

 足は載らないのか水の中

 こころなしか僅かに水を掻いているようにも見える

 だから余分な足が在るように見えてしまったのだ

 子どもが一羽

 お母さんの羽の下に潜り込んでいるのだった

 わかりにくかったが確かにそこにいる!






 お母さんの身体の上から羽に守られて

 水を覗き込んでいる

 もう一度よく観察すると

 二羽の子どものうち片方はほとんど自分で泳いでいるのだが

 もう一羽はすぐにお母さん登りしてしまうらしい





 カイツブリはまだ子どもが小さいときには

 親の背に子どもを乗せて楽をさせ時には守り

 そして時には子どもを羽の下に入れたまま水に潜ることもあるのだそうだ

 なるほど

 そうだったのか

 やさしい鳥なのだなと思った


 
 でもこの日この後で

 僕は子育ての厳しさを目の当たりにした

 
 その甘えっ子のオチビサンもときどき一羽で水に降り泳ぐのだが

 それでも疲れてしまうのか

 母恋しなのかはわからないけれど

 ねぇねぇ また乗せてよ とやってくる


 


  この写真 カイツブリが蛙泳ぎする鳥だということがよくわかる 子どもの足に注目



 ねぇ乗せてってば

 とでも言いながら近づいてくるらしい子どもに向かって

 お母さん鳥が

 ぶるるるるるる

 急に身体を震わせ始めた

 目つきもなんだか起こっているような

 あ いや怒っているような





 だめだめ だめよ

 ほら お前の乗るところなんかないよ

 こんなにブルブルしてるから

 乗ろうなんて思ったら跳ね飛ばされちゃうわよ


 それでも子どもが近寄ろうとすると

 もっと

 ブルブルブルブルブル・・・






 しばらくお母さんがブルブルし続けたので

 子どもはどうやら諦めたのか

 方向転換して泳ぎ始めた

 そうか

 いつまでも甘やかしていては子どもは生きていけなくなる

 だからこんな「こら!」も必要なのだ


 小さなかカイツブリの家族の大きな子育て方針

 人間も甘えていてはいけないなと

 当たり前のことを今更ながらに思ったりした







         さて次回は カイツブリの一家 パート2 食うためには・・・・

         そこでもまた 子育ての難しさとやさしさが


         まだ風が凄いですね ぶううううううう と鳴っている