風の場所 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 風が踊っていた
 橋の真ん中の街灯の上で
 川の水の揺れて流れていくのを見下ろしながら

 遥か遠くの屋根の上の風見鶏がくるくると回って
 もうすぐ帰ってくる旅人の足音が聞こえてくる

 風が長く歌ったのを
 誰も聞いてはいなかったけれど
 風はやっぱりそこが好きだった

 燕が近くまで飛んできて
 宙返りしながら「また明日(あした)」と言うだろう