草の陰から狐が跳んだ
鼠は気づいたがもう遅かった
覚悟を決めたが一応最後に言ってみた
「待ってくれ
まだ食われたくない
僕はまだ幸せを感じたことがない
考えてみてくれ
どうしても食うというのなら
せめて一度でも幸せな気分を味わってからにしてほしい」
待ってくれと言われて狐は待った
どのくらい待てばいいのかわからなかったので
十五分ほど
跳び上がったまま宙に浮かんで考えた
考えた末に狐は言った
「よかろう
食わないでやる
けれど条件がある
俺の友だちになってくれ」
鼠はそれを聞いて喜んで
「お安い御用だ
なんて僕は幸せなんだろう」と
そこで狐はさっと鼠に跳びついて
「じゃあいいな
幸せ一度感じたんだから」
鼠は驚いたが
自分の言ったことを思い出し
「わかった
それは道理というものだ
約束を違えては友情は死ぬ
さあ食ってくれ」
その潔い態度を見た狐がとうとう言った
「ふむ 気に入った
俺たち本当の友だちになれそうだ
まともな狐は友だちを食ったりしないのさ」
