昼の蔭 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 名状しがたい感覚で立ち止まる

 風は初夏

 日射しは夏で

 建物の蔭を通り過ぎたとき


 清々しい夏服の

 木漏れ日のレース模様を愛撫する

 歩み行く夏の白さに目を痛め

 時よ止まれと?


 遠くに去った人たちの声を風に聞き

 姿を木々の若葉の中に見る

 忘れがたきもの

 それは生きるということだ