一条(すじ)の文(ぶん)は恋に似ている
いろいろな語があって
それを口にする順番が肝心で
順番次第で意味が大きく変わることがあり
どういう順番でも意味の変わらないときもある
それから文はたいてい
ピリオドで終わってしまうけれど
ときには疑問符のまま捨ておかれ
ときには幸せな感嘆符で終わることもある
何行たっても終わらない
長い長い文を書く人たちも多いなか
半行で終わってしまう文で満足する人もいる
そんなこんなで文は恋に似ているが
僕はときどき考える
甘く切ない恋に似た文を
死ぬまでにせめて一条だけでも書きたいと
それほどに表わすものを抱きしめられる文
それが人であろうとなかろうと
生きていようと石でしかなかろうと
遠い日に見たと今日思い出すことができるなら
恋のように胸をいっぱいに満たすなら
そう
初夏の五月の一日は一条の文のように暮れていく
藤揺らす この風 文(ふみ)に挟んで 送らばや
睡鯨子