花の時 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 花は咲く
 地上に降りた明るい雲のように
 そして時には誇らしげに顔を上げ

 けれど
 花はいつも静かだ
 どのような空間に在ろうとも



















 そして
 花は決して時の掟には逆らわない
 時がくれば花は散る

 風が花を叩かないときにも
 花は静かに舞い落ちる







 それは吹雪ではない
 降り始めたばかりの粉雪のように音もなく






 けれど
 ただ真っ直ぐに根本に落ちて
 土に帰るのを風が悲しめば
 風は柔らかに吹いて
 小さな吹雪を作るだろう









 束の間の時をそこここに舞って
 静かに最後の彩りを残すようにと

















    散ればこそ花と呼ばれめ桜花


    散らずば雲の降り立つと見ゆ