夕闇 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある







 夕暮れて
 夕闇が来る

 黄昏は「誰そ彼」
 見た相手が誰なのかが分からずに「誰(た)そ」と思う刻(とき)

 僕は朝ぼらけや東雲(しののめ)と同じくらい黄昏が好きだ
 微妙に移り変わる光と色彩

 それを写真に撮ったつもりでも
 僕が見た色は写せない気がする

 何故なのか分からないけれど
 暗闇の中では物は冬ほどには色を喪わず

 むしろ余分な光と色の雑音が消え
 美しいとさえ思うのだ

 夕闇に舞う白鷺も
 くっきりと見え白く美しいのに

 なのに写真に撮ると
 いくら感度を上げても影になってしまう

 それはきっと僕が羽音を聞いて
 その羽音の高さから色を思うから

 人は聞くということを
 見るということを

 何処かで捨てたか諦めて
 言葉に頼り始めてしまったのだ

 だから夜になれば色は見えないと
 頭で考えて見なくなる

 昼ばかり見ていると
 音ばかり聞いていると

 ほんとうの色も形も音すらも
 わからなくなる

 そう教わったことが
 今になって痛いほど分かる気がする

 光と同じほど
 闇は総てを照らすのだ