行き違うとき | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 言葉の上で
 出来事として
 行き違いはあるけれど
 僕はそれをすぐには訂正しないで
 しばらく静かに悲しんでいる

 だって
 行き違い
 すれ違い
 そういうもので人生はできていると
 思うから

 だから少しは
 それらのことを
 愛すべきなんじゃないかと
 思うから

 すれ違い
 行き違いだって
 ほんのひとときは
 近くにいたのだと思うから

 すれ違い
 行き違っていく人と人
 どちらが悪いわけでなく
 みな同じように
 少しずつ悲しんでいるのだと思うから

 結局は
 ほんの少しのその距離を
 どう考えるかという
 ことなのであり

 その距離こそが人間の
 人と人との
 人生のすベてなのだと
 思うから