夕刻
鷺たちは休息場所に集まってくるのだった (夕鷺・枝と生きる(2))
それをずっと見上げていた僕は
周辺にもっと多くの生き物の気配を感じた
見回すと
周遊道の
僕が過ぎてきた道とこれからの道の両方に
白鷺の群れ
それはこんなふうに集まってはまた飛び上がる

白鷺が主だが白鷺だけではない
手すりにとまるとまり方その向きはいろいろだ
僕との距離は数メートル
来し方も行く先も鷺
僕はカメラを構えてシャッター音は立てるけれど
じっと動かずに居る
鷺たちが僕に気づいていないのではない
適当に距離は保っているのだが
夏場にもこれほどの数の鷺を近くに見たことはなかった
しかも人の通る遊歩道
この鷺たちのほとんどは右の何かを眺めている
最初僕はそれに気づかなかったのだが
何がそちらにあるのだろうかと思って
その方向に目をやると
水に近いところに
大小の鷺
(いや正確にはきっとダイサギとチュウサギなのだが)
何だかお互いに何事か話しているようにも見える
ここは池のほとりではなく
池に流れ込む小さな流れのようだ
あるかなきかの浅い水が見える
え?
何やら動きが激しくなり
ときどき声も
思わぬ白鷺乱舞に目を奪われる

もしもこの一帯が鷺たちの夜の休息場所であるならば
これは仲間が集まった談笑の場か
それとも宵を楽しむ舞踏会
さすればこれはあたかも
白鷺ホテルということになりそうで
時々僕の頭のすぐ上を超えてダンスに参加する鷺も居た
羽音どころか翼の切る風が僕にまで届く距離
時折上げる声もどこか楽しげで
いったい何が起きているのだろう
僕は少し鷺たちの僕に構わない素振りに酔っていた
反対側に今降り立ったこの一羽

冬毛が美しくちょっとばかりゴージャスな
この鷺に答えを教えてもらおうか
しばらく何食わぬ顔で
じっと流れのほうを見ていたが
くいと首を伸ばした
それからこちらを眺めやる
この下にも他の鷺たちのダンス・フロアがあるのだろうかと思ったとき
前傾姿勢

この全身でのめり込む動きは
夏場の水の上での漁と全く同じだった
魚がいるのだ

残念ながら瞬く間の出来事で魚の姿は捉えられなかったが
ぐいと何かを呑み込む動作
そうかここは
ダンス・ホールなんかではなくダイニング
で
こっちはギャラリー
もう何処かで食べてきたのか
なんだか静かに他の鳥の食事を眺めているようだが
そこはそれ生き物同士
他にも魚がいる気配を食事中の鳥の振る舞いから察したら
すぐに食事に参加する者が現れる
まあそばで静かに眺めているか
でなくても少し離れたところで食事を始めればいいのだけれど
つい
ひとさまの魚は美しく見えるのか
すぐ側に寄って「ここ座っていいですか」とか言おうものなら
はい
そうなのです
上にあったあの鷺たちのダンスのように
声を上げて
「ここは俺んところだ」
「いえ私のよ」
と
仲良く騒がしくなるわけなのだった
残念ながら
美しく舞い踊り相手を探す
恋の季節というわけではないらしい
まあそれでも
みな集まって多少のいがみ合いがあったにしても
それで鷺たちは深刻に争うことはなく
それぞれに生きながら
それでも何とはなしに群れて生きているらしい
木の家に住むのなら
できることならすぐ側にダイニングホールかレストランある方が
冬場の気持ちも温かくなるということなのだろう
そう思って見直すと
ほら上の4番めの写真の左側
3羽いるうちの真ん中の鷺

確かに口に魚を咥えているのでありました
生きるということは
生きた者同士の交歓であり
また
生きた者同士の命の交換なのかもしれないと
厳しいけれど
それぞれがそれぞれに生きてあり
似た者同士が群れ集う
もしかしたらこれはやっぱり
白鷺ホテル
そういう自然のままに客たちをもてなす
自然の一画に生まれ出た宿
人間の世界にもそんなホテルがあってほしいなと思う一方で
なんだか僕も
一羽の鷺になりたくなっていた
















