おおばんのあし | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


             オオバン
                       
             オオバン(大鷭) Fulica atra ツル目クイナ科オオバン属
             大柄な黒い姿と木の葉のような大きい弁足にルビーの目
             鮮やかに白い嘴と丸みを帯びた額板の白が印象的な鳥だ





 

















 そのおおばんは かたあしが きみょうにふくれていた
 うまれつきなのか けががかのうでもしたままになったのか
 あるきにくそうに あしをもちあげるときもあったけれど
 だれもそのことで このとりを さべつしようとはしなかった
 それはいつか とりのいのちを うばってしまうかもしれないけれど
 そんなことは きょうはどうでもいいのだと
 じぶんじしんも なかまたちもおもっていた
 こくううきゅうういくうううう

 なかまとつれだって いけをでて くさはらに みどりのめを
 ときにはちいさなむしを ついばむために
 ひとや まるいあしをした くるまの とおるみちまでも
 どこまでも ひょこひょことあるいていった
 それはいつか とりのいのちを うばってしまうかもしれないけれど
 そんなことは きょうはどうでもいいのだと
 じぶんじしんも なかまたちもおもっていた
 こくううきゅうういくうううう

 このみずのおもてにいきるとき とりはいっしんにいきていた
 おおきなみずかきのついた あしで みずをかき
 ながれついた きぎれのいかだをかきわけて
 かぜにふきあらされた みなものあわと いきていた
 おもいわずらうひまはない
 ただこのときをいっしんに いっしゅんいっしゅんをいっしんに
 おもいわずらうひまはない
 みずべにとりのいきるとき ぼくたちもまたいっしんに

 おもいわずらうひまは なげすてて
 こくううきゅうういくううううくう