朝の鳥 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある








 
 雪がほんの少しだけ降る朝だった

 何をしたらいいのかわからなかった

 ベランダから海と空を眺めて横を向いたら電線に二羽の鳥

 椋鳥かもしれない

 椋鳥は嫌われ者らしい

 大挙してやってきて糞をまき散らし

 しかも喧(かまびす)しい



 けれどこうやって電線から遠くを見ている二羽は美しい

 というか好きになる

 大きさがかなり違うから親子なのだろうか



 椋鳥の卵は不思議な色をしている

 以前雨戸の戸袋に巣を作られてそのままにしていたら

 雛の声がするようになった

 やがて巣立って居なくなった後に

 孵(かえ)らなかった卵がひとつ残っていた

 青みがかったパステルカラーのモス・グリーン



 今朝の空の色を少し濃くしたような卵だった

 親指よりは大きな



 それ以来

 窓辺に来る椋鳥を僕は追わないことにしている

 たったひとつの卵の鮮やかな記憶の故に



 その朝にすることができたと思った