ひととせと呼ぶは | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある






















    大晦日に花屋と和菓子屋に赴けば人々の列を成し
        ただこの明日を祝うためなれども嬉しげに急ぎゆく


    一歳(ひととせ)と呼ぶはこの花たちの咲き誇るこのときを言う
        ただ咲きて在ることの麗しければ他に言うことはなし


    冬空高く翔べる鷺たちも夕べには降りて眠るらん
        束の間に飛ぶを休みて憩う年の瀬を知るや知らずや


    この夜を特別という意味はなしただの一夜なれども
        晦日と人ざわめけば街に出て人の吐く白き息を見ん


    刹那ありまた刹那あり幾年(いくとせ)もこの一歳(ひととせ)も
        美しき苦しき悲しき刹那あり総てを嘉しと思いなす


    人の世のかくて一歳(ひととせ)終わりけり
        明日は異なる歳耀きて始まらむ習いなりいざと言う


    この習いの中に生きてあり我もかの人たちもおしなべて
        在ることは在るだけのことなりと知りてなお
             願いあるべし新しき年