乾いた笑いを笑える者 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 

 乾いた笑いを笑える者は

 真剣に努力して真っ直ぐに引いた線
 真っ直ぐな線が引けるときも
 悪戯な風が災いして
 あるいは休憩室で誰かが転んだために
 線が粉々になるときも
 どちらを見ても楽しげに笑える者でいる

 苦悩の円を幾重にも描くコンパスの黒炭の芯を手にとって
 これでもまた真っ直ぐな線が描けると思える者に

 泣きながら喜びながら
 如何ように歩む道も
 それが確かであるとは限らない
 輝かしき図面の用紙が燃えるとき

 砂に描いた絵と見なし
 まだ砂に触れた指を退けず
 自らもまた
 その儚き命を笑う者であり

 完成を待たずに折れるなら
 その芯をまた軽々と笑って拾い上げ

 尚も虚空にであれ
 線を引き続ける
 乾いた笑いに悦ぶ者こそが魂を

 死の床にあるものにさえ
 十二の弦を掻き鳴らし
 愉しき歌を歌い奏でる者となるはずと