愛はただ嵐の夜の | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 熱き足と足が
 冷たき腕(かいな)と腕(かいな)が
 木々と風のように奪い合い
 絡み合う

 降り注ぐ雨と
 猛る風の嵐の夜に
 愛し合う
 人の心の騒ぐ血は

 永い人類の
 か弱く洞穴(ほらあな)で
 怯えて過ごした歴史の名残り
 その不安をもう誰も知らない時代にも

 愛は恐れては奪い
 落ちては昇り満ちては欠ける
 不安の海の
 波濤の上の白き月

 何処にて停泊するのか
 波の間に間に揺らぐ舟
 児に乳を与える女の
 束の間の陶酔も

 我ら生きてあればこそ
 波になり風になりして
 木になり川になりして
 今を過ぎゆく