風の掟 | 不完全な切り紙細工

まだ呼ばれている
風にはためく薄い服を着て
風に素肌を開け放し
胸を風に打たせて歩いているのに
まだ呼ばれている
来いと
来なければいけないと
鳥たちの翼の向こうから
皮膚のの熱を吹き飛ばし
身体の重みさえ奪ったのに
まだ呼んでいる
遠い時間の奈落から
光の泡の表から
すべてを捨てて
来なければいけないと
山を越え
川を渡って
あなたも吹いてこいと
何も考えずに靴を捨て
身を投げて浮き上がり
風になれと
そして
どこまでも
私を追って来て
それが
私を愛し
風の虜(とりこ)となった者の定め
風は風としか抱(いだ)きあえない
その掟
その愛ゆえに
呼びつづけるのだと


