言わないと | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 誰にも言わないと誓った言葉がある

 言いそうになったら
 生コンクリートにでも身を投げて
 バックリとコンクリートを呑み込んで
 しっかりと口だけを塞ぐのさ

 目も耳もそのままで

 そんな言葉が火のように
 燃え上がって胸の中で涙のように熱くなる日
 そんなとき僕はその言葉だけでなく
 すべての言葉を失いたいと

 かなり本気で考えるようになり

 でもそこまで思ってしまえば
 その言葉はたちどころに消えて
 もう思い出すことさえもできなくなる
 次にまた思い出すのはいつだろう


 そうなる前の無言の夜は誰のもの

 誰にも聞こえぬ無言の夜は僕だけの
 誰にも言わないと誓った言葉だけがある夜さ