水辺の麗人・飛ぶ者たち(3) | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 燕
 アジサシ
 アオサギ
 そして

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 しらさぎ
 白鷺

 でもシラサギという名をもつ鳥は実はいない
 白いサギを総称しているだけだという

 大きさやその他の特徴から
 ダイサギ
 チュウサギ
 コサギ
 というふうに分けられる
 でも大きさから区別するのは
 一羽だけでいた場合には困難だ

 分類はともかくも
 間近に静かに降り立つのを見た
 これは実に快い驚きだった

 ここにきたばかりの頃
 それこそあの昼咲月見草の道を歩いていたとき
 頭上を影がよぎり
 見上げると白い大きな鳥が
 頭上1メートルもないところを飛んでいた
 それまで
 こんな鳥を直にこの目で見たことはない
 しかもほとんど手が届きそうな位置を

 羽音さえ聞こえたのだ

 しかし
 それきり再び出会うこともなく時間が過ぎていた

 今日見れば
 白さが目に痛いほどだった
 長い首
 風に揺れて広がる尾羽

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 散歩道の手すりに飛び乗ってから
 飛んだ

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 水際で何かを探している
 小魚か
 それにしても
 なんと長い首だろう

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 行きつ戻りつ

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 それから何かを見つけたのか
 ほんの一瞬だが静止して

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 頭を水に突っ込んだ

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 ところがこの後
 何かに気づいたのか
 そのままさっと


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 夕暮れ近くでも陽光のど真ん中に入られると
 どうしても暗くなってしまう
 敢えて明るく撮るとこのようになってしまった

 そのまま対岸まで飛ぶ
 餌を探しまわるために移動するのは鳥の習性だが
 対岸に着地した嘴をみると
 なんと


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 何やら咥えている
 貝のようにも見える
 しかし何を考えたのか
 そのまま軽く飛び上がると
 遊歩道の柵に

 まだ咥えたままだ
 そして

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 首をぐいと振った
 何をしたのか分からなかったが
 次の瞬間
 

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 貝と思えるものを人工的に作られた石畳に叩きつけていたのだ


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 どうも二枚貝のように見える
 そう見えるということは
 まだ殻は割れていないのだ

 これを三回繰り返し
 三回目には貝が十分割れたのか
 叩きつけた後で暫くの間つついていた

 サギの仲間もこういうことをするのかと驚いた
 貝を投げて割り中身を食べる

 鋭い野生
 水辺の貴婦人と言いたくなるその容姿だが
 肉食の鳥であることをまざまざと見せつけられた

 いや魅せつけられたと言うべきかもしれない
 一部始終を僕は固唾を呑んで見守った

 美しかろうとそうでなかろうと
 生きるために食わねばならないのは皆同じなのだ

 心なしか
 目が鋭く思える

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 この姿

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 長い首
 長い黒い嘴
 嘴から目にかけての浅い緑色
 さらにはそれが目よりも後頭部よりに伸びているところなど
 おそらくはダイサギなのだろう

 ダイサギもチュウサギも冬は黄色い嘴で
 夏は黒い嘴に変わるという
 目の周りの浅緑は婚姻色だとか

 恋の季節に備えて食べる
 それこそ野生の証


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 それから二度
 合わせて三回水辺の麗人は同じ行動を繰り返した
 耳がいいのか
 僕がシャッターを切る度にこちらをチラリと見ていたが


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 大池の中ほどの小さな島の方に悠々と飛び去った


 偶然が重なって辿り着いた土地だけれど
 この五月下旬の夕暮れ近い二時間余りの間に
 これだけの種類の鳥たちの
 日々の生き様を垣間見ることができるのを知って

 漂流者のように生きてきたけれど
 暫くはここに居るのも
 何かの縁かもしれない
 そんな気がした

 それは誰にも予測できないことだけれど
 そして明日にもここを去らなくてはならなくなったとしても
 この午後は僕の記憶にずっと残ることだろう

 飛ぶ者たちが
 こんなにも身近に生きている
 僕が学べることが多くあるに違いない