夕燕(ゆうつばめ)・友誼篇 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 さて続編

 まずは下の2枚をよくご覧ください
 何でしょう?

 「何でしょう?」って
 その質問の意味がわからない?

 よく見ると白い飛行物体が点々と

 レンズのゴミですって?
 いえいえ
 大きなものは直径5センチはある
 小さいものは多分5ミリ程度
 
8765

 そう
 知る人ぞ知る
 ケサランパサラン
 謎の飛行物体

 まあ植物の種など
 風が繁殖を助けてくれる
 といっても花粉ではないので風媒花とは言わないんだろうな
 要するに
 風に乗って種子を拡散する
 蒲公英(たんぽぽ)さんのお仲間ね
 でも草とは限らないのか

8771

 写真ではほんの少ししか写っていないけれど
 それはこの一瞬だから
 動画でとればケサランパサランの吹雪
 種吹雪?
 今まで見たこともない大量飛行だったのは
 この日の強風に乗ったせいかな

 で
 思わぬ僥倖とはこれではなく

8755

 いえ
 実は鴉でもないのですが

 鴉は燕には天敵なのだそうだけれど
 この鴉氏
 全然燕には関心がなく
 近くの畑の土手の上でなにやら軽妙なステップ・ダンス
 時には羽まで拡げて
 夏の夕方を踊り狂っていた
 何をしていたんだろ
 なかなかのリズム感だった

 さて本題の

8968

 いえ
 実はこれも本題ではないのだけれど
 だいぶ前に紹介した僕の友人
 おそらく海鵜だと思うのだが
 羽を広げているが飛ぶわけではないようで
 僕と同じで
 風が好きなんだろう


8958

 何を見上げてるかって?
 言うまでもなく本篇の主人公の燕たち
 ゆうゆうとブイの上で風を楽しんでいると
 周りをひゅるるひゅるりと
 飛んでいるのをときどき面白そうに振り返る
 ここまでも僕と同じで

 しかも手を振ってやると

9186

 そう
 こうやってご挨拶いただけるのである
 最初は威嚇かなと思ったのだけど
 あっちからこうしてくるときもあって
 手を振ってやると
 羽をはたはたさせる

 もしかしたら人間に飼われていた奴じゃないのかな

 この態度
 何だか舟の上の鵜匠の風格
 鵜が鵜匠
 うひょうっ・・・・

 
 さて
 海鵜と交歓していたら視野の左端に何やら

8901


 おお
 これこそ燕
 身体の大きさはほとんど雀
 それもそのはず雀の仲間
 でありながら長い羽
 これでも渡り鳥だからね

 僕が寄りかかっていた手すりの
 1メートルくらいのところに
 ふわりと着地

8893

 ちらりとこっちを見た
 長い羽が風にはためいて

 さてせっかくの出会いだが
 すぐにも飛び立つという雰囲気で
 写真撮るので精一杯

 ところがそのファインダーの視野の中
 ありゃりゃ


8903

 飛び立ちかけて
 風にどつかれたみたいに前につんのめり


8904

 こてん
 小さな足をばたつかせ

8905


 「な 何なんだ?!」と
 しばし茫然自失

 思わず僕が笑ったら
 ぐいと振り向いて

8910

 燕って意外にふくれっ面
 「見たな??
  何か文句あるんかよ
  え?」
 てな雰囲気で
 僕がニヤニヤしてると


8913


 「笑うんじゃない!
  こう見えても僕は怖いんだぞ!
  ほれ
  ほれ」
 みたいに羽を拡げて見せる

 「あ
  見てない
  見てない
  ヘマしたのなんか見てない」と僕

 「いいや 見たな
  僕だってちゃんと飛べるんだぞ
  この風の場合は
  こういうふうに羽を斜めにして
  尾羽をうまく組み合わせれば
  何てことはない
  簡単なもんなんだ」

8927



8909

 と言いつつも
 なぜかちょっと寂しげに仲間の方を眺めやる

8908


 ちょっと凹んだ感じなのが見え見えで

 僕が近寄っても気づかないみたいで


8925

 それから
 また離陸用意?
 真剣な顔つきになった 

8942


 風がびゅーっと吹いてくる
 羽が膨らんで
 「今だ!」と思うのだが
 なぜか
 こっちを向いて

8943


 挙句の果てに
 僕の方に向き直って
 二三歩近づいてきた
 でも
 それきりまた離陸準備

 「そうだ行け!」
 と頭の中で思う僕

 と
 また振り返って離陸断念

 これがのべ20分近く繰り返されて
 最後には僕の手の届くところで
 言ったり来たり
 何なんだよ


8946


 なんだか
 「こ これでうまく行きますよね」と
 先生か親に聞くような目つきだった

 まあ怖いのは自尊心の裏返し
 マジになればなるほど怖いのさ

 生き物なんだから
 何度も自尊心の疵
 でもそのたびに
 自分の力をより正確に見られるようになり
 そしてそれ故
 落ち着いて生きていけるんじゃないのかな

 風に乗ることはそんなふうにして
 覚えていけることかもしれない

 
 自分に言うみたいに頭の中で語りかけ
 「墜ちた数だけ飛べるようになるものさ」
 言ってもわからない燕に言った

 そのとき燕が僕のほとんど顔の下の手すりから
 水面に向けて飛び降りた
 それから見事な燕返しで舞い上がり

 何周かしてから
 途中で一緒になったもう一羽と
 すぐそばの葦みたいな植物に


 仲間かい
 それとも
 兄弟だっだのか

9375


 僕の目に間違いがなければ
 こっちを向いてるのがさっきの燕
 まだ若かったのかもしれない


 ところで
 残念なことに僕はすっかり撮るのを忘れてた


 よし
今度は
 僕が君の曲芸飛行を撮りにこよう




 帰り道
 夕暮れの弱まった光の中で
 なお強い風に吹き飛ばされそうになりながら

 美しい花たちが
 明かりみたいに浮き上がり
 溢れるように咲いていた



9480


 今夜は
 作者不詳の二胡の中華名曲

 我願做一只小燕
 (燕になりたい)
 を横笛にアレンジしたのを久しぶりに吹いてみようかな
 ひゅるりひゃらりこと


9484