反転 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 あなたは知らない
 僕が今
 透明なナイフを喉に押し当てて
 氷の冷たさを思い出そうとしているのを

 この切っ先を落とせば水はたちどころに凍りつく
 その冷たさを
 愛さずにはいられない初夏の闇

 それほどに
 熱い
 このからだの命

 愛は常に冷酷を内包しているのか

 だとしたら
 何に向かって翼を広げるのか
 まだ若い夏よ