一行の息 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



         静かな五月のピアノに寄せて 音だけのために





 誰かが書き残していった数行の詩のかけら

 そのどれか一行を

 あなたが読むときには

 そのひとは何処か遠くにいる



 一行に含まれた二十余りの音節の

 どれとどれをつなげて

 何番目にアクセントをおく

 あなたの読み方は追憶

 それとも明日



 ばらばらの言葉をつないで作る一息

 そう

 それだけが

 あなたの今



 書いたひとの一息とは違う長さかもしれないけれど

 そして思いもすれ違って

 いるかもしれないけれど

 それでもあなたはまた次の一行を目で追い始める


 息の続く限り続く

 数行の詩(うた)