弛むことのない紫 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

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 弛(たゆ)むことのない色と
 呼べるものがあるならば
 それは
 深い紫の
 存在の芯まで染まった木蓮の
 くすむと見えて萌え上がる
 その色で

 艶やかに装って笑む
 静かな焔のようなあなたの色だと

 近づいて言葉をかけることができなくて
 まだ寒い春風に
 そう伝えてと頼むほかはない
 たおやかな尊崇の念を
 我がものとしてやまない
 その花に

 風のくちづけを送りたき日



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          ハナミズキたちから一人離れたところで咲く紫木蓮
          今年の色は僕がここに来てから一度もなかったほどに濃く鮮やかだ